FC2ブログ

Contents

池田秀一は【シャア専用声優】ではなかった……『機動戦士ガンダム』(1979)における池田秀一キャラクター



池田秀一は、シャア・アズナブルのほかに7人の脇役に生命を吹き込んでいた

『機動戦士ガンダム』(1979-80)では、レギュラーキャラクターの担当声優はそれ以外の名有り・名無しの脇役の声を当てるのが普通でした。
主人公であるアムロ役の古谷徹(ふるや とおる)のみはアムロだけを演じていましたが、その他のレギュラー声優さん……井上瑶(セイラ、キッカ)、鵜飼るみ子(フラウ、レツ)、白石冬美(ミライ、カツ)、鈴置洋孝(ブライト)、飯塚昭三(リュウ)、古川登志夫(カイ)、鈴木清信(ハヤト)、玄田哲章(スレッガー)……は制作費を浮かすためでしょう、例外なく脇役の声も割り振られていました。
(昔のアニメでは、レギュラーキャラクターの声優さんが脇役の声を担当するのは普通のことでした)

それは、シャア役の池田秀一(いけだ しゅういち)も例外ではありません。
池田秀一=シャアという観念があまりにも強いため、一作目の『ガンダム』において、池田秀一はシャアにだけ生命を吹き込んでいたと思われがちです。
しかし、意外にもシャアのほかに7人の脇役の声をこなしています。

シャア・アズナブル(1~43)
オムル・ハング(12)
オスカ・ダブリン(12)
連邦整備兵(26)
連邦整備兵(27)
ホワイトベース兵士(27)
ワッケイン艦隊オペレーター(35)
ティアンムの参謀(35)

(声優さん情報は『ガンダム・エイジ』【洋泉社、1999年発行】所収の「史上最強 ガンダム声優紳士録」【筆者:サデスパー堀野】を全面的に参照しました。
サデスパー堀野さんによれば、耳だけを頼りに『ガンダム』(1979)のほぼ全キャラクターの声優さんを特定されたとのこと。
「もしかしたら間違っている可能性もなくはないが、信頼度は85~90%近いと思ってもらってかまわない」だそうです)




池田秀一=シャアは、ガンダム世界では不文律だった

『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(2004-05)で、池田秀一はギルバート・デュランダルを演じました。
このとき、池田秀一がシャア以外の役をガンダム・シリーズでついにやるのかと思った人はけっこういたのではないでしょうか。
わたしも、そうでした。

池田秀一=シャアというのは、ガンダム世界では神格化されています。
声優・池田秀一の最大の当たり役はシャア・アズナブルです。
ガンダムにおいて池田秀一といえばシャアの声優さんです。
シャアとアムロは、長らく『ガンダム』を代表する二大キャラクターでした。
アムロの古谷徹とシャアの池田秀一は、ガンダム世界ではそれぞれがアムロとシャアだけしか演じてはいけないのだという、そのような不文律がファンのあいだにはありました。

しかし、『SEED DESTINY』の実質的な敵(キラやアスランたちから見て)の総大将であるデュランダル役にキャスティングされました。
ただし、『SEED』はコズミック・イラ(C.E.)を舞台にしています。
第一作目の『ガンダム』の宇宙世紀(U.C.)とは異なります。

宇宙世紀ではないのだから、池田秀一がシャア以外の役柄を演じても良いではないか、とわたしなどは自分を納得させました。
しかし、その宇宙世紀においても、池田秀一は『機動戦士ガンダムUC』(2010-14)のフル・フロンタルを担当します。
このフル・フロンタルはシャアに似せて造られた強化人間であるため「声も似せた」ということなのでしょうが、なにか釈然としないものを感じました。
『機動戦士ガンダム』『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のシャア=池田秀一が、遠く過去の濃い霧の向こうに去っていくような寂しさだったのかもしれません。




『機動戦士ガンダム』(1979)のシャアではない池田秀一キャラクター

しかし、池田秀一はガンダム世界においてフル・フロンタル、さらにはデュランダル以前にもシャア以外のキャラを演じていました。
それも、1979年という『ガンダム』誕生年にすでに。

たしかに、『ガンダム』における池田秀一キャラクターの最初はシャア・アズナブルです。
第1話(1979.4.7放送『ガンダム大地に立つ!!』)においてです。

しかし、およそ2ヵ月後の12話(1979.6.23放送『ジオンの脅威』)でホワイトベースのクルーであるオムル(メカニック)とオスカ(オペレーター)を担当しています。
シャアが「坊やだからさ……」の名セリフを酒場でつぶやいていたとき、同じ12話で『ガンダム』第2、第3の池田秀一キャラというべきオムルとオスカの口からも池田秀一の声が発せられていたのです。
すでに『ガンダム』開始の2か月ちょっとあとには、池田秀一は「シャア専用」の声優ではなくなっていたのです。

【オムルの「第6ブロックに被弾」が、シャア以外の池田秀一ガンダムキャラの第一声か?(真偽未確認)】

【ちなみに、オムルとオスカは池田秀一以外の声優さんも多数の方が担当なさっています。
オムルは、古川登志夫(7話、17、24)、塩沢兼人(21、26、28、32、38)、二又一成(25)、鈴木清信(31)の各氏。
オスカは、鈴木誠一(2話)、古川登志夫(3、6、7)、鈴木清信(5、6、7、11、16~)、声優ではない人の声(15)の各氏】

本放送当時、シャアはのちの時代のようには『ガンダム』の現場で重んじられていなかったのかもしれません。
のちに神格化されるシャアと同じくらいにもとから重んじられていたなら、他のキャラクターと声をだぶらせるということはなかったのではないでしょうか。
しかし、だぶりを経験しなくてすんだのは主人公のアムロだけでした。
劇場版がヒットしてから、シャアの神格化のあらわれの一つである「池田秀一は【シャア専用声優】」という特別視が生まれたのかもしれません。




『機動戦士ガンダム』(1979)池田秀一キャラクターリスト

シャア・アズナブル(1話『ガンダム大地に立つ!!』~43話『脱出』)
オムル・ハング(12話『ジオンの脅威』)
オスカ・ダブリン(12話『ジオンの脅威』)
連邦整備兵(26話『復活のシャア』)
連邦整備兵(27話『女スパイ潜入!』)
ホワイトベース兵士(27話『女スパイ潜入!』)
ワッケイン艦隊オペレーター(35話『ソロモン攻略戦』)
ティアンムの参謀(35話『ソロモン攻略戦』)



井上瑶【セイラ、キッカ、ハロ】だけではない……『機動戦士ガンダム』(1979)における井上瑶キャラクター




井上瑶 ……セイラ、キッカ、ハロ

井上瑶(いのうえ よう)【1946.12.4~2003.2.28、享年56】といえば『機動戦士ガンダム』でセイラ・マス(17歳)を演じたことで有名です。
同時に、ハロとならぶホワイトベースのマスコット的存在であるキッカ・キタモト(4歳)をも好演しました。
そのハロも、TVシリーズで声を担当したのは井上瑶でした。
(劇場版Iでは高木早苗(たかぎ さなえ)さん、劇場版II、IIIは不明)

セイラ
キッカ
ハロ
錚々たる顔ぶれです。
『機動戦士ガンダム』の人気者ぞろいです。

しかし、このレギュラー3人以外にも、井上瑶は『機動戦士ガンダム』(1979)において数多くのキャラクターを演じています。




声優がだぶるのは、昔のTVアニメでは当たり前

初代の『機動戦士ガンダム』TV版において、レギュラー陣のなかで一人のキャラクターしか担当していない声優さんは、主役のアムロ・レイを演じた古谷徹だけかもしれません。
シャア(池田秀一)もブライト(鈴置洋孝)、ミライ(白石冬美)、リュウ(飯塚昭三)、カイ(古川登志夫)、フラウ(鵜飼るみ子)、ハヤト(鈴木清信)、スレッガー(玄田哲章)も、名前のあるなしにかかわらず脇役・チョイ役キャラクターを担当しています。

これは、おそらく声優さんのギャラを低くおさえようとしているのでしょうが、昔のTVアニメではそう珍しいことではありません。
『機動戦士ガンダム』も本放送のときは、アニメマニアにはそのリアルな人間ドラマなどが注目されていましたが、一般への知名度はほぼ皆無という海のものとも山のものともつかぬ作品だったため、制作費を切り詰めなければなりませんでした。

そのため、主役ではないセイラ役の井上瑶も複数のキャラクターを演じていました。




『ガンダム・エイジ』の「史上最強 機動戦士ガンダム声優紳士録」(サデスパー堀野)

そこで、井上瑶が演じたキャラクターをご紹介いたします。

参考にするのは書籍『ガンダム・エイジ』(洋泉社 1999)の「史上最強 ガンダム声優紳士録」という記事。
筆者は、サデスパー堀野さん。
声優チェッカー歴10数年(1999年時点)だそうです。
(声優チェッカーってなに?)
その堀野さんが、みずからの耳だけを頼りに『機動戦士ガンダム』TV版のほぼすべてのキャラクターの声優さんを特定しています。
耳を頼りにしているため「もしかしたら間違っている可能性もなくはないが、信頼度は85~90%近いと思ってもらってかまわない」とのこと。




井上瑶キャラクター【『機動戦士ガンダム』TV版】

セイラ・マス(2話~)
キッカ・キタモト(1話~)
ハロ(1話~)
フラウの母(2話『ガンダム破壊命令』)
母親(3話『敵の補給艦を叩け!』)
ペロ(5話『大気圏突入』)
老女(7話『コアファイター脱出せよ』)
母親(7話『     〃     』)
コーリー(8話『戦場は荒野』)
淑女(10話『ガルマ 散る』)
赤ちゃん(10話『  〃 』)
男の子(13話『再会、母よ……』)
ミリー・ラトキエ(27話『女スパイ潜入!』)


フラウの母(ファム・ボウ)は第1話では鈴木れい子さんが演じています。
フラウの母は、第1話で流れ弾の爆発に巻き込まれて亡くなりました。
井上瑶は、第2話でフラウが母の生前の姿を回想しているシーンで声を当てています。
フラウがアムロの家に行くとき、「夕食には帰るのよ!」と声をかけていました。

ペロは、サイド7の避難民の少年。
スミス老人の孫。
アムロに故障した自動車のラジコンを修理してもらいました。
ホワイトベースは大気圏突入に成功、そのとき初めて地球の陸と海を目にしたペロ少年は祖父のスミスに、「へえ、あれみんな陸地なんだね。こっちが海?海っていうんだろ?」と驚異の声を挙げていました。
ちなみに、劇場版では門谷美沙(かどや みさ)さんが演じています。

コーリーは、サイド7の避難民の少年。
ペルシアの息子。
ペルシアとコーリー母子は、ホワイトベースを降りてペルシアの亡き夫(コーリーの亡き父)の故郷セント・アンジェを目指します。
その際に、ジオン軍の偵察機ルッグンのパイロットであるバムロとコムと敵味方を越えて助けあいました。
別れ際にバムロから、いまいる無人の荒野が一年前までセント・アンジュであったことを告げられます。
亡き夫の故郷がもうこの世には存在しないことを知ったペルシアは涙しながらコーリーを抱きしめ、コーリーは「ママ……」と立ちすくんでいました。

淑女はガルマに憧れる女性たち3人のこと。
ニューヤークのパーティーで、前を横切るガルマの横顔を目にして「まぁ、ガルマ様、いつも凛々しいお姿」「まあステキ」「しびれちゃう」などと言いつつメロメロになっています。
このコミカルに描かれる3人の女性を演じたのは、セイラ、フラウ、ミライの井上瑶、鵜飼るみ子、白石冬美でした。
史上もっともゼイタクな3人のチョイ役女性たちだったかもしれません。

ミリー・ラトキエは姉ミハルと兄ジルの妹。
三人の姉弟は戦争孤児。
ミハルを母親代わりに、三人で生活しています。
ジルとミリーともに松岡洋子(まつおか ようこ)さんがクレジットされているようなのですが、サデスパー堀野さんはクレジットの間違いを指摘しています。
ジルは松岡洋子さん、ミリーは井上瑶とのこと。
ミハルがホワイトベースに潜入する直前、ミハルはしばしの別れ(それは永遠の別れになってしまいますが)にジルとミリーに頬を寄せて抱きしめます。
そのとき、「姉ちゃん……姉ちゃん、母ちゃんのにおいがするんだね」とミリーは目をつぶって幸せそうにミハルにささやきました。
ミハルは、「思い出させちゃったかね……」と二人を強く抱きしめ、目から涙を流しました。