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FAZZ(ファッツ)『ガンダム・センチネル』……悲運の高性能MS【張り子の虎/ハリボテ】、検証機から実戦へ



FAZZ

FAZZ。
Full-Armor-ZZ の略。
発音は「ファッツ」。

パイロットは、
04号機(FAZZ 04)、シン・クリプト(中尉)。
05号機(FAZZ 05)、ジョン・グリソム(少尉)。
06号機(FAZZ 06)、ロバート・オルドリン(少尉)。

フルアーマーZZガンダムの試験機。
頭頂高 :19.86m
全高  :22.11m
本体重量:45.4t
全備重量:94.6t
装甲材質:ガンダリウム・コンポジット
武装  :ハイパー・メガ・キャノン(主力兵装。全長はFAZZの全高を超える。ZZの頭部ハイメガキャノンの出力6割増し)
     ダブル・ビーム・ライフル(副砲。右前腕部にコネクター接続。主兵装だったZZのものより出力を抑えたバージョン)
     60mmダブル・バルカン(頭部左右に1基ずつ、1基の上下に砲口2門あるも、上部砲口はダミーのため左右の下部砲口2門のみ発砲可)
     AMA-09S 腕部ミサイルポッド(左前腕部装備)
     AMA-13S ミサイル・ポッド(バックパック左部装備)
     スプレー・ミサイル・ランチャー(左肩部正面装備)
     背部ビーム・カノン(ZZのようなビーム・サーベルの機能はなし)
     頭部ハイ・メガ・キャノン(機体バランスを検証するためのダミーで発射不可)
     腹部ハイ・メガ・キャノン(装備予定であったとも言われるが、試作機であるためダミーで発射不可)

FAZZは、模型雑誌『モデルグラフィック』企画の小説『ガンダム・センチネル』(1987~1990)に登場したMSです。
『ガンダム・センチネル』は「ペズンの反乱」を題材としています。
「ペズンの反乱」は、グリプス戦役末期の宇宙世紀0088年1月25日から4月5日にかけて、小惑星ペズンに駐留する連邦内エリート部隊である地球連邦軍教導団(ティターンズという説もあり)の地球至上主義の青年将校たちがニューディサイズを名乗り、ダカール宣言以後、エゥーゴ寄りになった地球連邦に反旗を翻した事件です。
『Z』の終盤から『ZZ』の序盤に相当する時期のことです。

FAZZは、このニューディサイズを追討するために組織されたα任務部隊に、Sガンダム(スペリオルガンダム)やZプラスC1(ゼータプラスC1)、ネロ、ネロトレーナー、EWACネロ(イーワックネロ)などとともに配備されたMS。

同時代のMSとしては度外れた火力を有し、しかし、そのため機動性に難のある機体。
その絶大な火力が無力化されたとき、弱点の機動性の低さゆえに悲劇を味わうことになるMSです。

FAZZは、いかなる悲運を経験するのでしょうか?




FAZZ 検証機・試験機であるのに実戦参加は無茶だった?

FAZZは、ZZのフルアーマー状態の機体バランスを検証するための試験機でした。
ですから、使えもしない頭部ハイ・メガ・キヤノンも、バランス検証のためにダミーとして備え付けられています。
しかし、ニューディサイズが蜂起したことにより、運用試験に回される予定だったFAZZはいきなり実戦に投入されました。

試合に出る予定ではなかったスポーツ選手が心の準備とフィジカルの調整に支障を来たしやすいように、FAZZにもなんらかの支障はなかったのでしょうか。
おそらく、実戦に必要でないものが余分についていて、実戦に必要なものがついていないというような差しさわりがあったのではないでしょうか。
たとえば、発射不能な頭部ハイ・メガ・キャノンがデッドウェイトになっていたり、将来的には発射可能になったかもしれませんが現時点では発射不可能な腹部ハイ・メガ・キャノンがこれまたデッドウェイトになっていたりします。
フルアーマーZZには施されていたビームコーティングがFAZZには施されていませんが、これは最初からコーティングする予定がなかったのか、急ぎ戦場に送り出すため泣く泣く省略したのか、いずれなのでしょう?

そもそもバランス調整のための検証機なので、検証の途中(それとも直前?)で実戦参加するハメになったFAZZは、実戦向きでない不安定なバランスの機体であった可能性が高いのではないでしょうか。




相手が悪すぎ【ブレイブ・コッド/ガンダムMk-V】

FAZZの火力には、すさまじいものがあります。
火力と射程については同時代のMSを凌駕しており、とくにハイパー・メガ・キャノンは当時の単独携行兵装のなかでは化け物じみた最高水準の出力(79.8MW)を誇っています。
このたぐいまれな火力と厚い装甲を活かした遠距離支援砲撃MSとして、実戦評価試験もかねて戦場に投入されました。

ただし、3機で1個小隊のFAZZ隊を構成していました。
これには疑問が残ります。
FAZZ隊のみで単独行動していた場合、その欠点である動きの鈍さにより高機動MSの敵の速さについていけないかもしれません。
ガンタンク(『ガンダム』『第08MS小隊』)やガンキヤノン(『ガンダム』『ポケットの中の戦争』)、ジムキャノンII(『0083』)のように、高機動MSの支援機として絶えず行動をともにする必要があったのではないでしょうか。

結局、FAZZ小隊は、単独行動中、高機動MSによって全滅させられます。

1機の敵によって。
しかし、そのMSとそれを駆るパイロットは当時一流、あるいは超一流のMSとMSパイロットでした。

MSは、ガンダムMk-V。
パイロットは、ブレイブ・コッド。

ニューディサイズ最強のパイロットとMSでした。
天性のカリスマ性にも恵まれたニューディサイズの指導者でもあります。

FAZZ小隊と戦闘に入ったブレイブ・コッドは、アウト・レンジからのハイパー・メガ・キャノン一斉射撃にたいし強襲をかけ急接近します。
3機のFAZZが乱れ撃ちした近接ミサイルの弾幕斉射も、ブレイブ・コッドは急制動をかけ、歯を食いしばり、奥歯が砕け、口のなかを血まみれにしながらも尋常でない高いGを耐え抜いて回避しました。
そこから、FAZZ小隊は不得手な接近戦に一瞬のうちに持ちこまれ、全機撃破されてしまいました。

04号機のシン・クリプトは機体から脱出して生還。
05号機のジョン・グリソム、06号機のロバート・オルドリンは戦死。

ガンダムMk-Vの損害は、インコムが使用不能になったことのみ。
敵が当時最強クラスのMSとはいえ、3機まとめて1機のガンダムMk-Vに完敗を喫したのです。

急ごしらえで戦場投入、動きの鈍重なMSのみで小隊を組み、相手が当代一流のパイロットとMSであった……これらいくつもの不運が重なったからでしょうか、高コストであり、たぐいまれな高火力ゆえに支援用MSとしてはたいへん優秀であったFAZZの小隊はもろくも潰(つい)えさったのです。




FAZZ……GFF、ジョン・グリソム、ハイパー・メガ・キャノン

模型をつくらない(つくっても萎えるくらいにヘタ)なわたしは、2000年代の一時期、完成品のGFF(GUNDAM FIX FIGURATION/ガンダム・フィックス・フィギュレーション)と、そのジオン版であるZEONOGRAPHY(ジオノグラフィー)を買い集めていました。
わたしの買い求めた10いくつかの機体のなかで、マイナーMSもいいところのFAZZはかなりのお気に入りMSでした。

なにしろ、重量感があります。
パーツが多いうえに、重装甲特有のゴツゴツしていて全身筋肉のかたまりといったようなマッシブな体形をしています。
堂々たる風采なのです。

それに、ハイパー・メガ・キャノンの巨大なことといったら。
サービスなのか、設定画よりもさらにFAZZ本体と比較して巨大な印象があります。
FAZZの全高を優に超しています。
そのボリュームのある巨大兵器には、『宇宙戦艦ヤマト』のヤマトの波動砲のような「見える巨大兵器」の魅力とロマンがおういつとしています。
フロイト心理学流にいえば、それはおのれのペニスを補うための「武器」になるのさ、ということになるのかもしれませんが、あまりフロイト心理学を信じていないわたしとしては、その魅力やロマンがどこから来るのかいまひとつわかりませんが、やはり、巨大兵器の迫力には抗いがたく魅了されるのです。

ちなみに、わたしの持っているFAZZは、ジョン・グリソムの05号機(FAZZ 05)です。
主人公のリョウ・ルーツ(Sガンダムのパイロット)とケンカしたりFAZZ隊の小隊長だったりで『ガンダム・センチネル』の主要人物の一人である04号機のシン・クリプトに対して、06号機のロバート・オルドリンとともにジョン・グリソムはセリフの一つもあったのかどうかわからないような端役(はやく)です。

つまり、人気がないから売れ残っていたのかもしれないジョン・グリソム機かもしれませんが、わたしはこの05号機が気に入っています。
04号機のシン・クリプトは戦死していません。
ジョン・グリソムとロバート・オルドリンは戦死しました。
05号機と06号機には生命を散らしたパイロットが乗っていたのです。
一人の人間の棺桶になった……一人の人間の最後の居場所だった……それだけでも、わたしは05号機と06号機は04号機よりも貴い存在に思えるのです。



アムロとシャアの最終決戦はなかったかも?(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』なかりせば)



シャア、『ZZ』から『逆襲のシャア』へ

シャアは、『ZZ』の当初案では後半から作品に登場する予定でした。
ハマーンのもとでアーガマやジュドーたちと戦いつつ、もともとメインターゲットであったとおぼしきハマーンに終盤、謀反。
ハマーンを追討し、ネオジオンを掌握し、連邦と最終決戦をおこなうはずでした。
(参考文献:『機動戦士ガンダム大全集』講談社 1991)

しかし、急きょ、『逆襲のシャア』の制作が決定し、シャアは永遠のライバルとも言うべきアムロとの決着の戦いにおもむき、ハマーンに牙を向くのはグレミー、ハマーンを葬るのはジュドー、ジュドーの最後の敵はハマーンということになりました。

そうでなければ、ジュドーの前に最後に立ちはだかるのはハマーンではなくシャアのはずでした。




『逆襲のシャア』がなければ、アムロとシャアの決着はなかった?

アムロの最後の敵は、シャア。
シャアの最後の敵は、アムロ。

それを当然のことであると思っている方は、けっこういらっしゃるのではないでしょうか。
わたしもそうです。
『ガンダム』という物語はアムロとシャアの戦いから始まり、その二人の戦いでアムロとシャアの物語に幕が下りる。
これだと、物語の構成としてすっきりしています。
始まりと終わりとが対になって呼応しています。
そして、『逆襲のシャア』でその通りになりました。

しかし、『逆襲のシャア』がなかったならシャアは『ZZ』に登場していました。
『ZZ』当初案では、シャアは最後にニュータイプに覚醒を果たせない、ニュータイプになり切れない男として失意のうちに『ZZ』の舞台を降りる運命でした。
かたや、ジュドーはニュータイプに覚醒します。
当初案からは、モビルスーツ戦でのシャアとジュドーの勝敗は不明ですが、シャアの父ジオンが唱導したニュータイプのありようについてはジュドーに完全に軍配が上がります。
ニュータイプのあるべき姿としては、シャアは『ガンダム』のアムロに続き、『ZZ』でジュドーにまたしても一敗地にまみれることになっていたのです。

……アムロはいません。
シャアの最後の戦いのどこにもアムロはいません。

もし、『逆襲のシャア』がなかったのなら、我々が目にしたほぼ完璧なかたちでアムロとシャアの戦いに決着がつく(ニュータイプとしても、モビルスーツのパイロットしても)『逆襲のシャア』の終幕を目にすることはできなかったのです。

アムロとシャアが、それぞれ互いを最後の戦う相手とせずに【ガンダム】の物語の終焉(しゅうえん)を迎えていたのなら……なんだか、それはとてつもなく寂しいようにわたしには思えるのですが、いかがでしょうか。



企画案ではハマーンを討つのはジュドーでなくシャアだった(『機動戦士ガンダムZZ』)

シャア、ハマーンのネオジオンに参画

『ZZ』当初の企画案では、シャアは後半に登場する予定でした。
(以下、企画案の参考・抜粋:『機動戦士ガンダム大全集』講談社 1991)

ハマーンのもとにおもむき、ネオジオンに参画するシャア。
(「シャアは、地球連邦政府が、人々の宇宙移民を可決するのを見てから、ハマーン・カーン軍に参画する」)
シャアの力添えを受け入れるハマーン。

自分を捨てるようにしてアクシズを出ていき、再会した『Z』で数々の因縁の戦いを繰り広げたにもかかわらず、このとき、ハマーンは憧れの人(元恋人?)シャアが自分のもとにやって来たことを素直に喜んだのではないでしょうか。
なにしろ、『Z』において幾度も戦火をまじえたにもかかわらず、最終決戦であるコロニーレーザー(グリプスII)周辺の戦いにおいてすらエゥーゴからアクシズへの翻意をシャアにうながしていたのですから。

サラミス改の誘爆で百式もろともシャアが戦死(じつは生存)したときには、
「シャア……私と来てくれれば……くっ……」(『Z』最終50話)
と悔しさをにじませていました。
最後の最後まで、ハマーンにはシャアに対する強い未練があったのです。

そのシャアが、『ZZ』初期案では【私と来てくれた】はずでした。
しかし……。



シャア、ハマーンを討つ

ネオジオンに参加したシャアは、「一パイロットとして」かつての乗艦であった「アーガマに戦いを挑み」、ジュドーとも戦います。
まるで、「ジュドーの実践の教師」のように。

しかし、シャアの狙いはハマーンだったのです。
シャアは、「ハマーン・カーンにとって返す」。
「ハマーン・カーン軍の攻勢が始まった時」、シャアは「ハマーン・カーンを討つ」。

シャアとハマーンの戦いの経緯はくわしく記されていませんが、『Z』最終50話の戦いの続き的な意味からも、みなが納得する決着のつけかたからしても、モビルスーツ戦で雌雄を決したのではないでしょうか。

もしかしたら、ほぼ同性能のモビルスーツに乗ったのなら、ニュータイプ能力では劣っていても操縦技術や経験や精神的な粘り(「まだだ、まだ終わらんよ」『Z』最終50話)といったものでシャアのほうがハマーンより、より強いモビルスーツパイロットであったのかもしれません。



企画案では、ジュドー最後の敵はハマーンではなくシャア

このあと、シャアがジュドーと戦ったのかどうか、企画案からは今一つ明確ではありません。

ただし、ジュドーはシャアのありようを否定します。
「その最後の戦いの瞬間」(この最後の戦いなるものがシャアとの戦いであるのかどうかは明示されていません)、「ジュドーの意思が、全世界に放出される」(ニュータイプ能力による全世界への語りかけ)。
そこでジュドーは、
「同化しろ! 自己の主義を通すだけでは、人類は、解放されない。シャアのやり方は、自分が納得するだけの姑息なものだ」
シャアを否定します。
シャア自身もそれを聞いて、「シャアは、本当にそう思うのだ」と自分のやりようが正しくないことを認めています。

モビルスーツ戦の結末は不明ですが、ニュータイプ能力に関しては覚醒を果たせないシャアという『ガンダム』でも『Z』でも描かれたことがここでも踏襲されています。
少なくとも、ニュータイプ能力についてはアムロにも、カミーユにも、ジュドーにも勝てなかった人間として、シャアは『ガンダム』の物語を終えていくのです。

シャアはジュドーの最後の敵でした。
しかし、覚醒を知らない未完成のニュータイプとして舞台から退場するのです。



『逆襲のシャア』、シャアは最大のライバル・アムロとの戦いへ

しかし、この企画案の通りにはなりませんでした。
『逆襲のシャア』制作が、急遽、決定したのです。
シャアはアムロとの決着をつけるため『逆襲のシャア』へ。

『ZZ』出演がなくなったシャアの代わりにハマーンに謀反を起こすのは、同じ金髪美形で、人気も上々だった(ザビ家の血を引いているともされる)グレミー・トトに。
しかし、グレミーではハマーンを討つには役者不足。
ジュドーの最後の相手としても、グレミーでは物足りない。
……という判断があったのでしょうか、ジュドーの最後の敵はシャアではなくハマーンになり、ハマーンはシャアではなくジュドーに討たれることに。

かように、ハマーンは当初の案では主人公の最後の敵ではありませんでした。
『逆襲のシャア』によって、ハマーンはジュドーの最終的な敵となりました。
また、『逆襲のシャア』がなかったなら、アムロの最後の敵はシャアではなかったかもしれず、シャアの最後の敵はアムロでなくジュドーだったかもしれないのです。
シャアの最後の相手として、アムロとジュドーと、どちらのほうが多くの人たちを納得させたでしょうか。
わたしは、ジュドー・ファンの方たちにはたいへん申し訳ないのですが、アムロに圧倒的な軍配が上がると思います。
シャアとアムロには長い歴史があります。

もしそうであるなら、『逆襲のシャア』により、ハマーンはジュドーの最強の敵となり、シャアとアムロはたがいがたがいを最終的な相手として戦うことができるようになったわけです。



ハマーンは愛するシャアの手にかかりたかったのではなかろうか

では、すべての者が『逆襲のシャア』によって満足を得ることができたのでしょうか?
わたしは、そうは思いません。

ハマーンです。
ハマーンは、選ぶ権利があったのなら、最後の相手として……みずからを葬る者としてジュドーとシャアのいずれを選んだでしょうか?

ジュドーはハマーンのお気に入りです。
「帰ってきて良かった……強い子に会えて……」(『ZZ』最終47話)
これは、ハマーンの生前最後の言葉です。
亡くなるときも、ジュドーに会えたことを喜んでいます。

しかし、シャアを前にして最期を迎えたとしたなら、ハマーンはいかなる言葉を漏らしたのでしょうか。
わたしは、ジュドーのときを超える安らぎと幸福……もしかしたら至福を胸にあの世へ旅立ったのではないかと思うのです。

もしそうなら、ハマーンにとって『逆襲のシャア』はじつに余計な作品だったのかもしれません。



グレミー・トト……シャアの代わりにハマーンに謀叛 そしてシャアは『逆襲のシャア』へ(『機動戦士ガンダムZZ』)


グレミー・トト……ネオジオンの一兵士からネオジオンのもう一方の指導者へ

グレミーは、初登場時、たんなるネオジオンの一兵士にすぎませんでした。
マシュマー・セロの一部下。
量産機ガザCに搭乗する一般のモビルスーツパイロット。

しかし、グレミーは時流に乗ります。
物語終盤、ミネバ・ザビとハマーン・カーンを敵に回し、ネオジオンを二つに割る反乱を引き起こしました。
ミネバを戴くハマーンと並ぶ、ネオジオンのもう一方の指導者となりました。



マザコン、グレミー

グレミーはかなりのマザコンです。

「あのときのお礼をさせてもらう。ママから、けじめはちゃんとつけろと言われているんでね」(12話。ルー・ルカと再会したときの、10話でルーにだまされたことへの怨み言)

「なんだ……この胸の高鳴りは……。ママ……もしかしてこれが恋というものですか……」(12話。敵であるルーに不覚にも恋してしまったときのひとりごと)

「パパ、ママ。ようやく私もモビルスーツの実戦に出ます。ご覧になっていてください」(10話。ひとりごと)

「パパ、ママ、家の名前をもってグレミーをお守りください」(ひとりごと)

などと、ことあるごとにママを持ち出すグレミー。
(「パパ」もけっこう言っていますが)
ほかの場面でも「ママの教え」にこだわる、こだわる。

上記の「ママから、けじめはちゃんとつけろと言われているんでね」のときには、
「ママァ? おーやだ? あんたマザコンなの?」
とルーから白い目で見られています。




グレミーの美貌

グレミーは、かなりの美青年です。
その美貌はきわだっていました。
なかには『ガンダム』シリーズ屈指の美男子に挙げる人がいるくらい。
金髪で甘いマスクのグレミーは初登場時から目立つ兵士でしたが、しかし、それは軍人としての能力うんぬんかんぬんではなく、ひとえにその秀でたルックスによるものでした。

グレミーは、初期案では最後まで「一兵士」のままの予定だったという説があります。
それどころか、かなり早い段階で戦死する予定だったとも。
しかし、監督・富野由悠季のお気に入りであり、その甘いマスクゆえにかファンの人気も上々で、それゆえ重要人物にランクアップしたという説もまた。
(ちなみに、声優の柏倉つとむのファンのあいだでの評判も良く、グレミーの躍進を後押ししたという説もあります)
ただし、真偽は定かではありません。
本放送時(1986~87)のアニメ雑誌でスタッフが語っていたそんな主旨の記事を読んだ記憶があるのですが、手もとに当該雑誌はなく、出典元の雑誌名もあいまいですので、わたしの記憶違いの可能性も多分にあります。
しかし、ここではそれを前提に話を進めます。

もし、一兵士のままであったなら、もしかしたら、グレミーはその美貌を活かした恋のサヤ当て要員だったかもしれません。
ヒロインであるルー・ルカをめぐるジュドーとの三角関係で袖にされる要員。
グレミーは恋に破れ、ルーはジュドーと結ばれるという三角関係のラブコメのために生み出されたキャラクターなのかなあ、とわたしなどは思うのです。

恋のライバルは手ごわいほど恋愛は燃えます。
『めぞん一刻』の音無響子(おとなしきょうこ)を巡る五代の恋のライバルが、美男子で家柄の良い高給取りの三鷹だったように。
『ガンダムF91』(小説版)のセシリーを巡るシーブックの当初の恋のライバルが、美青年で良家の子弟であり学業成績優秀の生徒会長だったドワイト・カムリだったように(ただし、アニメのドワイトは空気になっていて恋愛にはまったく絡んでいません。無害そのものといった印象です。それに比べて小説版では、恋のライバルにうってつけの自信満々なけっこうイケスカナイ奴として描かれています)。
『ドラえもん』におけるしずかちゃんを巡るのび太の恋のライバルは、ジャイアンやスネ夫ではもちろんなく、容姿端麗で文武両道のできすぎ君でなくてはならないように。

しかし、グレミーは主人公の恋のライバルだけで終わるキャラクターではなかったのです。
宇宙世紀の歴史に名を遺す人物になりました。




シャアの代わりにハマーンに謀反、そしてシャアは『逆襲のシャア』へ

初期の企画案では、シャア・アズナブルは『ZZ』の後半に登場予定でした。
ハマーンへの反意を仮面の下に隠しながらネオジオンの将校としてハマーンのもとでジュドーたちエゥーゴやカラバと戦い、最終的にはハマーンに謀反、ハマーンを討ち果たすはずでした。
(参考文献:『機動戦士ガンダム大全集』講談社 1991)

しかし、『逆襲のシャア』の制作が決定。
シャアは最大のライバルであるアムロ・レイとの決着をつけるため、『逆襲のシャア』へと戦場を移します。

その代役として白羽の矢が立ったのがグレミー・トトでした。
グレミーはシャアと違いハマーンを討ち取る役目はあたえられませんでしたが、ハマーンを敵にまわしてネオジオンのヘゲモニー……主導権を争う一方の大将の大役をになうことになりました。




ネオジオンの37.5%(MS300、艦艇10)がグレミー支持

ハマーン軍とグレミー軍の戦力比は以下の通りです。
(参考文献:『月刊ニュータイプ 1987年1月号』)

ハマーン軍
 MS 500
 艦艇 10

グレミー軍
 MS 300
 艦艇 10

MSと艦艇の数だけでその支持率を論じるのは片手落ちの感がいなめませんが、わたしの知りえた情報はMS数と艦艇数のみでした。
また、数字が500、300、10と揃いすぎているのも、切り捨てや切り上げなどで端数を考慮にいれなかったからでありましょう。
ゆえに、実態を正確に反映した数字ではないかもしれませんが、一応の「雰囲気」といったものが分かっていただければと思います。

それにしても、およそ37.5%がグレミーの配下についたというのはどういうことなのでしょうか?
ハマーンはネオジオンのカリスマです。
実績も十分。
それだけではありません、ハマーン軍はジオン唯一の正当な後継者と目されているミネバを擁立(ようりつ)しているのです。
ミネバとハマーン、この二人を敵にまわして、なぜ、グレミー(あるいは、グレミーとプルツーたち)はそれだけの支持を得ることができたのでしょうか?




貴種であるグレミー

グレミーへの支持には様々な理由があるでしょう。
ハマーンの主義主張に反感を持っている、ハマーンのもとでは出世が望めない、ミネバを傀儡(かいらい)にしているハマーンが許せない、ハマーン陣営が敗北すると予測した、グレミー陣営は劣勢だからこそ勝利したときの見返りは大きいだろう、などなど。

それら多くの場合に当てはまる普遍的な理由のほかに、グレミーだからこその「特殊」な事情があるのかもしれません。
旧ジオン公国でもザビ家に力添えした卓越した名家のトト家当主という貴種性が、魅力ある反ハマーンの旗印として人々を引き寄せたのかもしれません。
しかし、「貴種」という点でいえば、トト家を凌駕する名家の血を受け継いでいるのではないかというひそかな噂がグレミーにはつきまとっています。
ザビ家。
グレミーはザビ家の血を引いているのではないか。
だからこそ、デギンの三男・ドズルの長女であるザビ家のミネバにも対抗できたのではないかと取りざたされています。

ただし、これに関しては意見が分かれます。
グレミーはザビ家の血を引く、引かない。
引いていたとしても、誰の血を引くのか?
などなど、さまざまな論が割拠しています。
ですので、わたし個人の価値判断は挟まず、ここではグレミーの「可能性」を列挙するだけにとどめておきます。
では……。




グレミーはザビ家なのか?

・一説によれば旧ジオン公国、デギン・ザビ公王の庶子であるとも、ギレンのクローンともいわれる(『GUNDAM EPISODE GUIDE 3』角川書店 1999)
・ザビ家の血を引くと噂され(『GUNDAM EPISODE GUIDE 3』角川書店 1999)
・グレミーは、自らがギレンの血統に連なる者であることを標榜し、アクシズを掌握した(『機動戦士ガンダムZZ データコレクション6』メディアワークス 1997)

・牙を隠したジオンの若き血族(『GUNDAM FACT FILE 12』ディアゴスティーニ 2004)
・グレミーはザビ家の血を引いていたと言われるが、その詳細については定まっていない。デギン・ソド・ザビの愛人の子という説、デギンの試験管ベビーという説、さらにはギレン・ザビの試験管ベビーだったという説。これらの説が入り混じり、彼の正確な血筋は不明となっている。だが、彼は自らの血筋を正統なザビ家に連なるものと信じ、その導きに従って行動したのである(『GUNDAM FACT FILE 12』ディアゴスティーニ 2004)
・グレミーの出自について、詳しいことはわかっていない。彼がザビ家の血を引いていたということは、一般的に信じられていることだが、実際にそれを証明できる者はいないのである(『GUNDAM FACT FILE 12』ディアゴスティーニ 2004)
・ザビ家の正統の血を受け継ぐ(と信じる)彼にとって(『GUNDAM FACT FILE 12』ディアゴスティーニ 2004)

・彼の体にはザビ家の血が流れていた(『機動戦士ガンダム大全集』講談社 1991)
・ザビ家の人間の試験管ベビーだとうわさされる青年指揮官(『機動戦士ガンダム大全集』講談社 1991)

・ザビ家の血を引く青年士官(『ACE IN THE GUNDAM』英和ブック 2015)
・ザビ家の後継者としての自覚が芽生え(『ACE IN THE GUNDAM』英和ブック 2015)

・プル、プルツー、グレミーはギレンの子(『別冊アニメディア 機動戦士ガンダムZZ PART2 完結編』学習研究社 1987)

・グレミー、プル、プルツー、NT部隊は、ギレン・ザビの精子を人工的に生殖させた(『アニメディア 1987年2月号』学習研究社)

・ザビ家の血筋を引いていると言われるものの、その正体は未だ定説を見ない(『データガンダム キャラクター列伝 宇宙世紀編II』角川書店 2010)
・グレミーはトト家の両親によって育てられたが、その出生には様々な説がある。デギンの息子説やギレンとニュータイプ女性から作られた人工授精での子供説、その他にもサスロのクローン説やザビ家の血族から作られた試験管ベビー説などがあり、ハマーンはミネバが亡くなった場合の代用品として守り立てたようだ(『データガンダム キャラクター列伝 宇宙世紀編II』角川書店 2010)
・その正体を伏せられたグレミーは、当初アクシズの兵士からはハマーンのお気に入りの少年兵程度に思われていた(『データガンダム キャラクター列伝 宇宙世紀編II』角川書店 2010)
・その血筋からアクシズのナンバー3と目され(『データガンダム キャラクター列伝 宇宙世紀編II』角川書店 2010)
・そんな彼に、バイオテック研究スタッフのマガニーが接触してきた。彼はザビ家信奉者たちの差し金でグレミーに近づき、彼に出生の秘密を語り、独自の戦力を授けるためニュータイプ部隊のプルシリーズを預けたようだ(『データガンダム キャラクター列伝 宇宙世紀編II』角川書店 2010)
・グレミーが正統なるザビ家の末裔と知ると多くのネオ・ジオンの兵士がハマーンから離反して彼の下に集ったようだ(『データガンダム キャラクター列伝 宇宙世紀編II』角川書店 2010)

・ザビ家の血、そして野望の果て(『ガンダム人物列伝』PHP文庫 2008)
・真のザビ家再建は、血によって選ばれし者の手で行わなくてはならない(『ガンダム人物列伝』PHP文庫 2008)
・グレミーは自分の出生の秘密を知ってから、この日がくるのを待ちわびていた(『ガンダム人物列伝』PHP文庫 2008)

・我々を結びつける血のつながり、忘れるな【ハマーン】(『ガンダムの常識 Z&ZZ編』双葉社 2009)
・ジオンの血の王国を、私の手で再建する【グレミー】(『ガンダムの常識 Z&ZZ編』双葉社 2009)
・グレミーはジオンを復活させようとしている。グレミーは血の力だけで宇宙を治めようとしている【ハマーン】(『ガンダムの常識 Z&ZZ編』双葉社 2009)
・旧ザビ家との関係については諸説ある(ギレン・ザビのクローン、ザビ家の血を引く試験管ベイビーともいわれている)が、ハマーンが命を落とした今、真実を知るものはいない(『ガンダムの常識 Z&ZZ編』双葉社 2009)