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シャア・アズナブル……言われているほど「赤」ではない「赤い彗星」(『機動戦士ガンダム』)



赤い彗星のMS……赤、赤、赤、青、赤、金、赤

シャア・アズナブルのMSが赤い色(あるいはピンク)に塗装されている理由に定説はありません。
さまざまな推測がなされています。

比較的優勢な説は、私見によれば二つ。
一つは、国威発揚のためにシャアのMSを(ザビ家の誰かが)目立つカラーである赤に塗装させたというものです。
ルウム戦役の英雄を士気高揚に利用しようという意図のもと、シャアのザクが赤く塗装されたというもの。
もう一つは、シャアのMSでの戦功、あるいは公国をしょってたつ将来性が高く評価されてパーソナルカラーを認められ、シャア個人の趣味として赤(とピンク)を選択したというものです。
派手なカラーリングは被発見率が高く、標的になりやすいという弱点があります。
ただ、敵味方に著名な凄腕のパイロットの機体であるなら、その派手さゆえに、敵に精神的なプレッシャーをあたえ、かたや味方を安心させ、その士気を鼓舞することができます。
そのような効果を狙って公国はパーソナルカラーの赤をシャアに認めたのではないかという説です。

なかには、異説(奇説?)もあります。
シミュレーションゲーム『ギレンの野望 ジオンの系譜』(1998年発売)では、あの赤は下地塗装のサビ止め塗料の赤だとの説が開陳されています。
士官学校を首席卒業したエリートのシャアに嫉妬した機材担当者が、サビ予防の下地塗装しか施していない機体を渡したというものです。

もしかしたら、これは、ゲームブック『最期の赤い彗星』(1986年発売)の影響かもしれません。
この作品は、ア・バオア・クー陥落直後、数人の部下たちとともにマ・クベの旗艦グワジン級宇宙戦艦「アサルム」を奪ってア・バオア・クーを脱出、シャアがアクシズへ向かう物語です。
この作品でシャアが搭乗するMSの一つが、MS-06R-2 高機動型ザクII(R-2型)の5号機(実際は、R-2型は4号機までしか存在しません)です。
この機体は赤色ですが、シャア専用のMSではありません。
サビ防止塗料を塗ったため赤色に見えるだけ。
シャアが脱出の途中発見して乗り込んだMSが、偶然赤だったという設定です。
それによって、シャアのMS=赤というお約束を守りつつ、「ジオン敗戦の混乱した脱出時になぜシャアが都合良く赤いMSに乗ることができたのか、それは単にサビ止めの下地塗装をしただけのMSだから赤かったのだ」と合理的に説明するための苦肉の設定だったのかもしれません。

どちらにしろ、ゲーム設定は公式ではないので、依然謎のままです。

シャアの愛機(一時的に搭乗したルッグンやガンダムMk-IIなどはのぞきます)のなかにも、赤く塗装されていないMSはあります。
ジオングと百式です。

ジオングは、ゲルググを中破させて戦闘不能になったため、急きょ乗り込むことになった機体であるためダークブルーとブルーの機体であることはやむをえないでしょう。
(左右の角と耳下?だけ、赤だったりしますが)

『Z』の百式は、塗り替える時間も機会あったはずですが最後まで金色で通しました。
シャアのMSなのに赤じゃない?と疑問に思った方も多いことでしょう。
これは、富野由悠季監督が「シャアの赤色というのはもう古いんじゃないか、黄金のシャアにしよう」(抜粋:「別冊アニメディア 機動戦士Zガンダム 完全収録版」学研、1986)ということから金色の塗装にされたとのこと。
あとで、百式の命名は設計者M・ナガノ博士が「百年後も通用する設計」と高言したことに由来し、そのため機体色も永遠を意味する金が採用されたという設定が生まれたようです(『THE OFFICIAL GUNDAM FACT FILE No.8』ディアゴスティーニ)。
もう一つ後付けで、金色塗装の合理的説明として優秀な耐ビームコーティングを施してあるからという設定もつくられたようです。

しかし、その「古い」はずの赤いシャア専用MSが『逆襲のシャア』では復活しました。
サザビーです。
富野由悠季監督の心境にいかなる変化が?
あるいは圧力?

ともあれ、シャアは百式の時点で、優秀な耐ビームコーティングのために愛機を赤色に塗装することを断念しました。
シャアの赤へのこだわりは、その程度だったのでしょうか?

しかし、シャアが赤に愛情を持っているのかどうか疑わしい事実は他にもありました。
私服です。
シャアの私服です。

シャアの私服は、ほぼレッド/ピンク関係とは無縁なのです。
わたしの調べた範囲のなかでは、レッド/ピンクは一例のみ。
赤いネクタイとピンクのシャツのあのときのみ……。

ではシャアの私服の色の組み合わせ一覧を……その前に、ほぼ赤系統で統一された軍服/ノーマルスーツから見てみましょう。




赤い彗星の軍服……赤、赤、赤/ノーマルスーツ……赤、赤、黄

シャアは、軍服に関しては一貫して赤を通しています。
『ガンダム』『Z』『逆襲のシャア』皆勤賞です。
100%。
ただし、『逆襲のシャア』では2種類の軍服があり、モノレール搭乗時に着用していたコート型の軍服ははっきりと赤なのですが、演説や外交交渉に臨むときのマント付きの軍服は赤茶色に見えなくもありません。
たぶん、濃い赤色ということなのでしょう。

ノーマルスーツも、『Z』までは赤系統のみでした。
『ガンダム』第2話でサイド7に潜入を果たすときにはじまり、ルナツー潜入、そして唯一、戦闘中にノーマルスーツを着用したア・バオア・クー。
『Z』では第1話のグリプス潜入から、最終回にいたるまで戦闘中は赤いノーマルスーツを着用しつづけました。
しかし、『逆襲のシャア』でついに赤いノーマルスーツの歴史は途絶します。
総帥用の特注のノーマルスーツを着用しますが、色は黄色です。
金髪に合わせでもしたのでしょうか?
それとも、30歳を超えたシャアは、さすがに派手な赤いノーマルスーツは気恥ずかしくなった?
(とはいえ、軍服は赤のままですが)

ちなみに、クェスはシャアとお揃いの小さいサイズの特注ノーマルスーツを着用していますが、そのカラーは赤でした。
モノレール搭乗時の軍服も、クェスはシャアとお揃いの軍服を着ていますが、こちらはシャアも赤、クェスも赤のほぼ完璧ペアルック。
『逆襲のシャア』では、プライベートで愛人のナナイとお揃い?のバスローブを身に着けていますが、バスローブの色はシャアが薄い青、ナナイが赤でした。
周囲の女性に赤い着衣をまとわせる趣味がシャアにはあった?




赤い彗星の私服……赤系統たった一例、青系統と黄系統多し

問題は、私服です。
私服のレッド/ピンク系統は、たった一度のみ。
ネクタイが赤、シャツがピンク。
酒場でギレンのガルマ追悼演説に耳を傾けていた(適当に聞いていただけのような気もしますが)ときの服装だけです。
(ただし、わたしの確認した範囲内ではであり、もしかしたら漏れがあるかもしれません)


『ガンダム』
キャスバル家出     :コート(ブラウン?)
酒場、ギレンの追悼演説 :ネクタイ(赤)、シャツ(ピンク)、スーツ(白)

『Z』
アクシズ、ハマーンと  :ネクタイ(淡い緑)、シャツ(白か淡い青?)、スーツ(青)
月のアンマン      :シャツ(白)、ベスト(淡い紫)、コート(紫)、ズボン(淡い紫)、ブーツ(黒?)
ダカール、ブレックス暗殺:マフラー(白か淡い青?)、コート(青か黒?)
ダカール演説      :ネクタイ(黄)、シャツ(淡い青)、スーツ(青)

『逆襲のシャア』
サイド1のロンデニオン :ネクタイ(ブラウン?)、シャツ(淡い黄)、スーツ(黄)、ズボン(黄)、靴(黒?)
スウィートウォーター   :インナー(淡い青)、バスローブ(淡い青)、スリッパ(淡い青?)


いかがでしょうか?
個人の趣味がもっとも反映されるものの一つであろう私服にレッド/ピンク系統のものがこれだけ少ないのは、わたしには意外でした。
軍服やノーマルスーツやMSとちがい、私服では青系統が優勢です。
シャアはもしかしたら「青い彗星」になりたかったのでは?
あるいは『逆襲のシャア』でノーマルスーツ、私服のスーツ、シャツ、ズボンともに黄色だった……それは自分の髪の毛である金髪を、引いては亡き母の金髪、その娘である妹セイラの金髪をほうふつとさせるやもしれぬ黄色を好んでいたのでしょうか?
マザコンであることが『逆襲のシャア』で確定したシャアなら、その可能性もまんざら否定できないのではないでしょうか?
それとも、赤はここぞというときのために温存しておくとっておきの大切な色だったのでしょうか?
シャアの意中の色はいずれにありや?



エルメス……悲劇が付きまとうMA【ララァ・スン、クスコ・アル】(『機動戦士ガンダム』)


エルメス……悲劇、悲劇、悲劇

MAN-08 エルメスは、3機が試作されました。
エルメスは、一年戦争時代(U.C.0079)のニュータイプ専用MAです。

『機動戦士ガンダム 公式百科事典』(講談社、2001)からエルメスの項を抜粋してみます。


「なお、MAN-08は試作機が3機製作され、ララァ・スン少尉が搭乗したものは2号機であるという。
1号機は、パイロットが機体の要求するニュータイプ能力を有していなかったため、暴走したビットの攻撃で自爆したとされる(テスト中にも多数のビットが制御を失い、行方不明となったという)。
また、3号機はクスコ・アル少尉によって操縦され、実戦に投入されたというが、これは信憑性に欠けるといわざるを得ない。
この説によればクスコ・アル少尉はシャア・アズナブル大佐の指揮したニュータイプ部隊の一員であったことになっているが、その存在は確認されておらず、ララァ・スン少尉出撃前後の状況から見ても、実在は甚だ疑わしい」


クスコ・アル少尉は、小説版『機動戦士ガンダム』(著・富野喜幸(現在の富野由悠季))に登場したエルメスのパイロットです。
小説版設定ですので、アニメ作品を基準にする『ガンダム』の公式設定からは「信憑性に欠ける」とコメントされているわけです。

なお、クスコ・アルの搭乗したエルメスは、小説版だと2号機、MSV設定では3号機でした。
ララァの乗るエルメスが2号機というのはMSV設定です。
MSVでは1号機/ビットの攻撃で戦死したパイロット(名前不詳)、2号機/ララァ・スン、3号機/クスコ・アルということになります。

この3人、皆が皆、不幸な運命をたどることになります。




エルメス1号機のパイロット……不足していたニュータイプ能力

1号機のパイロットは、実戦でなく実験中に戦死しました。
ニュータイプ能力者ではありましたが、エルメスを制御できるほどの能力には恵まれず、本来なら自分の強力な武器になるはずのビットの攻撃を受けて亡くなりました。

なまじ、ニュータイプ能力があったがための悲劇と言えましょう。




ララァ・スン、クスコ・アル……エルメスでの戦死、性的な被害

ララァとクスコ・アルは、それぞれ、アニメ版と小説版を出自とするキャラクターですが、特徴的な共通点が2人にはあります。

まず一つ目、二人ともエルメスに搭乗して戦死しています。
相手は二人ともアムロ・レイ。
それぞれ、アニメ版のアムロと小説版のアムロに撃破されています。

二つ目。
ララァもクスコ・アルも、性的な被害者でした。
クスコ・アルは、連邦の兵士に性的暴行を受けた過去があるようです。

ララァは、インド地区の売春宿で生きるために身をひさいでいたといいます。
むろん、ララァが望んでの売春ではないでしょう。
孤児である貧しい少女のララァは、身をひさいで生計をたてなければならなかったのです。
ただ、ララァは売春宿にはいたものの、客を取る前にシャアによって救い出されたという説もあります。
また、公式であることを謳っている(とはいえ、本当に公式なのかは不明ですが)『GUNDAM FACT FILE No.1』(デアゴスティーニ、2004)では、「むやみやたらに客を取らされるようなことはなく、相応に自尊心を持てるような環境だったようだ」とのことです。
この文言はあいまいです。
「むやみやたらに」ではないものの「客を取らされ」てはいたとも読めますが、いかがでしょうか?
それとも、「むやみやたらに」客の相手をさせるようなひどい待遇は受けず、まったく「客を取らされるようなことはな」かったということなのでしょうか?
「相応に自尊心を持てるような環境」の「相応」の「自尊心」というのも、「相応」の程度があいまいで、まったく「客をとらされ」なかったので「自尊心を持て」たのか、「客を取らされ」たものの人数や性交の態様においてひどい条件ではなかったので「相応に自尊心を持て」たのか、いまひとつ不明です。

もし、「客を取らされ」ていたのであれば、そうひどい環境に置かれていなかったとはいえ、なにがしかの性的な被害は受けていると申してよろしいかもしれません。
そうであるなら、ララァとクスコ、二人のエルメスパイロットはその点でも共通点を有していることになります。

エルメスのパイロットには、深い悲劇の影がつきまとっています。




ゲームの中のエルメス……幻の4号機、幻のエルメスパイロット

エルメスは、アニメ作品、小説版のほかにもゲーム『SDガンダム GGENERATION』にも登場しています。
こちらではエルメスは4機。
1号機がララァ、2号機がクスコ・アル、3号機(白)がハマーン・カーン、4号機(赤)がセレイン・イクスペリ(ゲーム・オリジナルキャラクター)。
ただし、ゲーム作品ですので、公式の世界ではこの設定は「幻」ということになるでしょう。
「幻」の4号機。
「幻」のセレイン・イクスペリ。

ハマーンは、『ZZ』で第一次ネオ・ジオン抗争最終局面においてキュベレイを駆りジュドー・アーシタのZZガンダムと一騎打ち、その果てに戦死しました。
セレインは、ゲームの中で、グリプス戦役時、エゥーゴにMAテラ・スオーノを撃破されて戦死しています。
(ただし、セレインは選択によっては生還するシナリオの分岐あり)
やはり、エルメス搭乗経験者は、みな、最期は戦死する運命にあるのです。




エルメス

型式番号:MAN-08
タイプ :ニュータイプ専用試作型モビルアーマー
全長  :47.7m
全高  :85.4m
本体重量:163.7t
全備重量:291.8t
装甲材質:超硬スチール合金
開発基地:グラナダ
武装  :メガ粒子砲×2(防衛用)
     ビット×10(あるいは、×10前後、×12)(攻撃兵器)
異名  :ソロモンの亡霊
     チューリップ
     トンガリ帽子