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シャア・アズナブル……人気低迷の戦犯からアニメ史上に残る名キャラクターへ(『機動戦士ガンダム』)


シャアという陰気なキャラクター

シャアは、かつて『機動戦士ガンダム』(1979)本放送の低視聴率の一因とみなされたことがあります。
スポンサー(タカラかクローバー)が低視聴率に業を煮やし、「シャアという陰気なキャラクターがいけない」と難くせをつけてきたのです。

シャアが陰気?
あれは、かっこいい暗さなのでは?

しかし、スポンサーは「シャアという陰気なキャラクターがいけない」とクレーム。
かくして、シャアは左遷されることに。
ガルマの死の責任ではなく、視聴率低迷の責任を取らされての左遷です。

それどころか、一説に、不要になったシャアは殺される予定だったとも……。
(シャアを殺そうとしていた富野由悠季を、名古屋テレビの番組プロデューサーである関岡渉(せきおかわたる)が止めたという説あり【真偽不明】)

殺される予定!
あのシャアが。
かつてアニメ界で最高の権威をもっていた「アニメグランプリ」(『アニメージュ』主催)において、80年代、歴代ベストワンキャラクターを3度受賞したシャア・アズナブルが。
(1980年下半期~89年までの80年代の合計10回のうち、歴代ベストワンキャラクターを受賞したのは「シャア」「ルパン三世」「クラリス」「ナウシカ」の四人だけです)
(ちなみに、『アニメージュ』で宮崎駿の漫画『ナウシカ』が連載していた影響もあるのでしょうが、ナウシカは97年までに12回受賞。
ルパン三世は、これも『アニメージュ』と関係が深い宮崎駿監督『カリオストロの城』などの影響もあるかもしれませんが、シャアを超える5度の受賞を果たしています)

しかし、その「勝利の栄光を君に!」はのちのはなし。
79年の時点では、シャア=陰気=低視聴率の一因=シャアは人気がない、とスポンサーには見なされていたのです。




復活のシャア

『機動戦士ガンダム』は大ヒットしました。
しかし、初めからではありません。
初回放送時の視聴率は名古屋地区で平均9.1%、関東地区で平均5.3%。
79年当時、視聴率15~20%のアニメ作品がけっこうあったことを考えると、かんばしい数字でないことはあきらかです。

しかし、このあと『機動戦士ガンダム』の人気は上向いていきます。
いつのころからか?
これには、少なくとも2説あります。
☆本放送終盤
☆再放送
再放送説が一般に広く流布していますが、本放送終盤にはすでに再延長が打診されるくらい(しかし、物語の構成がすでに再延長に修正すること不可能であったため、かつ次の番組の準備もあり、その打診には応じられなかった)には人気があったのだという本放送終盤説も主張されています。

いずれにしろ、本放送前半中盤まで人気が低迷していたのは間違いなく、そのなかでも初期の戦犯として挙げられたのが「陰気な」シャアでした。

しかし、そのため左遷され物語から姿を消すと(12話『ジオンの脅威』)、「なぜシャアを出さない」という抗議が殺到。
そこで26話『復活のシャア』で、シャアは再び物語へと戻ってきました。

シャアは人気低迷の原因ではなかったのです。
それどころかファンから愛されていたのです。




アニメグランプリの歴代キャラクター部門におけるシャア

じつは、第1話終了直後にテレビ局のほうにたくさんのハガキが寄せられ、その多くが「シャアがかっこいい」という内容のものだったともいいます(番組プロデューサー/関岡渉・談)。
これが事実とすれば、人気低迷が「陰気な」シャアのせいだとするスポンサーの判断は正確なものであったのでしょうか?

しかし、シャアの人気は『機動戦士ガンダム』という一作品の枠内でおさまるものではありませんでした。

かつて、「アニメグランプリ」は賞としてアニメ界最高の権威を持っていました。
雑誌『ニュータイプ』に追い抜かれるまで『アニメージュ』はアニメ雑誌の人気最高峰に位置していました。
その『アニメージュ』が主催する「アニメグランプリ」は、『アニメージュ』の読者ならずとも注目していました。

この「アニメグランプリ」に歴代ベストワンキャラクターなる部門があります。
これは、一年間のうちに放送されたり公開されたりしたアニメが対象の他の部門(たとえば、グランプリ作品、キャラクターなどの各部門)とちがい、年月に関係なく投票されるキャラクターの賞です。

数多くいるアニメキャラクターのなかから選ばれるわけですから、たいへんな激戦をくぐり抜けて栄冠をつかむことになるわけですが、歴代キャラクター部門が新設された1980年下半期の第3回アニメグランプリから1982年度の第5回まで三連覇を果たしたのがシャアでした。

参考までに1980年下半期から85年までの歴代キャラクターをしるしておきましょう。
(抜粋参照:第9回アニメグランプリ【1987・4・18 日本武道館】のパンフレット)




アニメグランプリ(歴代キャラクター部門)【80年下半期~85年度】/シャア

☆80年下半期
1位 シャア・アズナブル 2250
2位 キャプテン・ハーロック 1138
3位 アムロ・レイ 1049

☆81年度
1位 シャア・アズナブル 1447
2位 キャプテン・ハーロック 1166
3位 島村ジョー 809

☆82年度
1位 シャア・アズナブル 1880
2位 ルパン三世 1205
3位 クラリス 1123

☆83年度
男/1位 ルパン三世 2207
女/1位 クラリス 2362

☆84年度
男/1位 ルパン三世 3252
女/1位 クラリス 2710

☆85年度
男/1位 ルパン三世 2462
  2位 シャア・アズナブル 1011
  3位 諸星あたる 474
女/1位 ナウシカ 2346
  2位 クラリス 1443
  3位 ラム 854


【補足】
☆83年度
男/1位 ルパン三世 2207
  2位 シャア・アズナブル 1483
  3位 明神タケル 1035
女/1位 クラリス 2362
  2位 ラム 1228
  3位 ミンキーモモ 1213
☆84年度
男/1位 ルパン三世 3252
  2位 シャア・アズナブル 1050
  3位 クラッシャージョウ 637
女/1位 クラリス 2710
  2位 ナウシカ 1219
  3位 ラム 1122


(ただし、年間の「キャラクター部門」ではシャアはけっこう苦戦しています。
79年度~82年度まではTVシリーズや劇場版で、シャアは投票対象でした。
79年度の第1回アニメグランプリでは2位アムロ、3位シャア。
80年度は1位シャア、2位アムロで栄冠に輝きます。
しかし、80年下半期から82年度までの3年間は(資料でわかる範囲の)3位以内にランクインしていません。
さらに85年は、『Zガンダム』でシャア(クワトロ)は男性部門2位。
1位の『タッチ』上杉達也におよびませんでした)




シャアという男

スポンサーから「シャアという陰気なキャラクターがいけない」と人気低迷の責任を負わされて左遷させられた(あるいは殺されるところだった)赤い彗星は、再登場するはずではありませんでしたが復活し、それどころか80年代には全アニメキャラクターのなかでも屈指の有名人気キャラクターになりました。
しかし、熱心なファンの働きかけと、それなりの運がなければ、シャアは「ガンダムの最初のころに活躍した美形で凄腕の赤い彗星とかいうMSパイロット」としてごく一部のアニメファン、ガンダムファンのあいだに名を留められるだけの存在になっていたでしょう。

「まだだ、まだ終わらんよ!」
じっさい、シャアは『ガンダム』【12話/ジオンの脅威】でまだ終わらなかった男なのです。
それゆえ、シャアは羽ばたくことができました。
赤い羽根でアニメの大空を。



アプサラスはギニアスとアイナを捨てた「母様」の子宮なのか?(『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』)


アプサラス……VSジャブロー戦略兵器

アプサラスは、地球連邦軍本部ジャブロー奇襲のためのMAです。
ミノフスキー・クラフトを用い、弾道軌道でいったん連邦の防空圏外である成層圏まで上昇、つづいてジャブロー上空へ急降下、そこから高出力の大型メガ粒子砲で地下にあるジャブロー上部の厚い岩盤を貫き、地球連邦軍本部を壊滅させようというのです。

ミノフスキー・クラフトは、Iフィールド同士の反発力によって浮揚させる技術。
ミノフスキー・クラフトを搭載すると、航空機や可変MS/MAのように揚力を利用する必要がないため機体形状の自由度が高く、空中で静止できるため機体運用に多様性をもたせることができるなどといった大きな利点があります。
アプサラスのミノフスキー・クラフトは、先行して搭載されたMAX-03 アッザムのものを凌駕し、運動性が高く、飛行時間はより長く、高度1万m程度の上昇が可能でした。
大気圏突入時の降下速度は、連邦の警戒網をかいくぐり奇襲するにじゅうぶんなマッハ11以上であったともいわれています。

大型メガ粒子砲は、おそらく一年戦争時代のMS/MAのなかでも最強クラス。
優劣は判然としませんが、MA-08 ビグ・ザムの大型メガ粒子砲級のすさまじい破壊力。
じっさい、最終決戦で、アプサラスIIIの大型メガ粒子砲は山の中腹をえぐり貫通しています(第11話『震える山(後編)』)。

アプサラスIIの残骸を解析した連邦のシミュレーションによれば、急速降下でジャブローの第3次防衛ラインを単独突破、9秒後に直接攻撃が可能という予測が弾き出されました。
そして、至近から大型メガ粒子砲によりジャブローを消滅させるのがアプサラスの戦略目的でした。




アプサラスたち

アプサラスはアプサラスI、アプサラスII、アプアラスIIIと一つ一つステップアップを重ねて完成しました。

☆アプサラスI
重力下におけるミノフスキー・クラフトの安定的な運用のための飛行テスト機。
そのため、大型メガ粒子砲の砲口は設けられていますが、実射することはできません。
砲口は飛行実験を円滑に進めるためカバーで覆われています。
そのため非武装。
予想していなかった敵(08小隊)との遭遇の際には、ミノフスキー・クラフトの出力を急上昇させ、その衝撃波で08小隊のRX-79(G) 陸戦型ガンダムを吹き飛ばし翻弄しました。
これは「ミノフスキー・クラフト自体を攻撃兵器として利用した、非常に珍しい例」(抜粋:『THE OFFICIAL GUNDAM FACT FILE』ディアゴスティーニ)とのことです。
プロフィールが「武器はミノフスキー・クラフト」という希少な(唯一?)MS/MAということになりましょうか。

☆アプサラスII
高出力の大型メガ粒子砲を実装。
大型メガ粒子砲の発射試験に従事しました。
とくに大型メガ粒子砲とミノフスキー・クラフトのマッチングテストに重きを置きました。
待ち伏せされたアプサラスIIは、単独で08小隊の3機のRX-79(G) 陸戦型ガンダムと死闘を展開。
初めて発射されたアプサラスの大型メガ粒子砲の驚異的な威力に、08小隊の面々は戦慄しました。
ただし、射撃時のバランスに課題が残りました。

☆アプサラスIII
アプサラスの完成型。
アプサラスI、IIのデータをもとに欠点を克服、性能をさらに強化し、I、IIとは比べものにならない巨大で強力なMAになりました。
大型メガ粒子砲の拡散発射により、一瞬のうちに、確認できるだけでもRX-79(G) 陸戦型ガンダム1機の頭部を破壊、陸戦ガンダム1機撃破、RGM-79(G) 陸戦型ジム4機を撃破し、推定で20機以上のMSが犠牲になったのではないかとのこと。
最大出力の大型メガ粒子砲のビームは山肌を焼き貫通、その後方にいたビッグトレーを破壊しました。
最期は、シローとアイナの駆るRX-79(G)EZ-8 ガンダムEz8の捨て身の攻撃により、ギニアスもろともアプサラスIIIのコクピットはEz8の右腕に叩き潰され、ガンダムEz8ともつれ合うようにして火口へと消えていきました。

ちなみに、アプサラスの頭部はI、II、IIIと一貫してMS-06 ザクIIの頭部を流用していました。
大型メガ粒子砲の砲口の上部にザクIIの頭部が配されています。
ザクII頭部の左右両側の装甲にはスパイクめいた突起物があり、これがわたしにはザクIIのスパイク・アーマーに見えました。
ですから、手足のない巨大なザクIIに見えなくもなく……。
ギニアスには、ザクIIへの愛着やこだわりでもあったのでしょうかね?




アプサラス……インド神話の水の女神 その美貌の誘惑はときとして人を狂気に誘う

アプサラスの名は、インド神話の女神にちなんでいます。
アプサラスはインド神話の水の妖精、天女たちのこと。
「天上の踊り子」とも称される歌舞音曲の名手。
インドでは、古くから美女の典型とされています。

ただ、その美しさに違い(それとも、違わずと言うべきでしょうか)、けっこう恐ろしい一面を持つ天女たちでもあります。
たとえば……。
北欧神話のワルキューレさながらに、勇者を慈しみ、戦争で死んだ戦士たちをインドラ神の楽園に導く役目をになっています。
また、インドラ神の命令を受けて、その妖艶な美貌によって修行中の人間や聖者や英雄を誘惑し、堕落させ、破戒させる存在でもあるのです。
その誘惑により、人々に精神異常や狂気を起こさせるとも。

そのため、『機動戦士ガンダム 公式百科事典』(サンライズ 2001)にはこんな記述があります。
「アプサラスはその美貌を以って、英雄や苦行中の聖者を魅了するともいう。このMAのパイロット、アイナ・サハリンに連邦軍の士官、シロー・アマダ少尉が恋愛感情を抱き、彼女を救った結果、少尉が軍法会議にかけられたという挿話は、奇妙な符号である。」

たしかに、シローはアイナの美貌に(それだけではなく内面にもですが)魅惑され、連邦軍人としてははなはだまずいことになりました。
ジオン公国への戦意が鈍くなったのはたしかでしょう。
しかし、アイナへの想いは、故郷であるサイド2の8バンチ「アイランド・イフィッシュ」への毒ガス攻撃により家族や友人を失ったシローの、ジオン公国への激しい憎悪に凝り固まった心を救ったとも言えるでしょう。
(シローがジオンへの憎しみをあまりにもあっさり捨てアイナに恋愛感情を抱いたことに対する批判もありますが。
たとえば、6話から最終話までを担当した故飯田馬之助監督は、そのためシローのことを大嫌いになったことがあるそうです)




アプサラスはギニアスとアイナの母の子宮?

しかし、真にアプサラスに誘惑され、魅せられ、堕落し、狂気に追いこまれたのはギニアスでしょう。
アプサラスに魅入られたギニアス・サハリン。

アプサラス開発計画中止を本国のギレンに進言しようとした旧友ユーリ・ケラーネをその部下もろともに爆殺したり、アプサラスIIIを我がものとして独占するために苦楽をともにしたはずの開発スタッフを完成パーティーの席上で毒殺したりと、ギニアスのアプサラスへの執着は狂気以外のなにものでもありませんでした。

なぜ、ここまでアプサラスに執心したのでしょうか?
……母親が原因ではないでしょうか。

ギニアスとアイナの母親は、男を作り、二人を捨てて家を出て行ってしまいました【ただし、異説もあります】。
母に捨てられたギニアスの傷心は、いかばかりであったでしょう。
この過去のトラウマを癒やすためにアプサラスに夢中になっているように、わたしには思えてしかたありません。

「馬鹿な!愛など粘膜が創りだす幻想に過ぎん!母様も、そうやって我らを捨てたのだ!」
これは最終話におけるギニアスの言葉です。
シローを愛する妹アイナへの叫びでした。

「粘膜が創りだす幻想」というセリフが生々しく、非常に印象に残るセリフでしたが、その感情むき出しのきわどい表現がギニアスの傷ついた心を端的にあらわしているようにわたしには思えます。

ところで、アプサラスIIIは子宮のかたちをしているという説はけっこう有名です。
もし、それが本当で、ギニアスが子宮に模してアプサラスIIIをデザインしたのなら、あるいは無意識のうちに子宮に模してしまったのなら、ギニアスは母親を求めていたのではないでしょうか?

心理学用語に「同一化(同一視)」なるものがあります。
他者が持っている優れた性質を自分自身の人格のうちに取り入れ、自分自身の存在を他者へ重ね合わせることです。
ギニアスは、母の子宮のなかにいる「捨てられていない」胎児のギニアスになりたかったのではないでしょうか。
アプサラス=母の子宮とみなし、そのコクピットにいる自分を、まだ母に捨てられていない胎児のころの自分と同一化し至福に浸っていたのかもしれません。

わたしが最終話を観ていつも奇異な想いにとらわれるのは、アイナとシローのガンダムEz8の右腕にアプサラスのコクピットごと潰されるときのギニアスの表情です。
狂気に歪んではいましたが、どう見ても笑顔なのです。
アプサラスのなかで死ねることを喜ぶかのような笑み。
それは、胎内にいたころの「母様に捨てられていない」自分として生涯を終えることへの至上の喜びゆえだったのかもしれません。

「我が子アプサラス」
ギニアスの最終話のセリフです。
ギニアスにとってアプサラスは「我が子」でした。
捨てることなどできるわけがない我が子=アプサラス。
ゆえにアプサラスを処分しようとするユーリを殺害し、我が子を独占するために開発スタッフを殺害したのかもしれません。
テストパイロットとして自分とともにアプサラスを誕生させたにもかかわらず、自分たちを捨てた母親のように我が子(=アプサラス)を捨て、男(=シロー)のもとに去っていった妹アイナをギニアスが殺害しようとしたのも、母に捨てられた過去のトラウマのせいなのではないでしょうか。
(放たれた銃弾は胸に忍ばせていた懐中時計によってはばまれました)

それに、我が子(=アプサラス)を捨てることのない母をギニアスみずからが演じることにより、母に捨てられた過去を必死に塗り替えようとしていたのかもしれませんね。
決して母から見捨てられることのない子=アプサラス=ギニアス自身という過去の記憶の改変を夢見ていたのかもしれません。
傷ついたギニアスは、アプサラスの子宮のなかで胎児となり、母の愛による再生を願っていたのかもしれません。



『ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに』 マーフィー小隊……ウサギを部隊章にしたティターンズ


ウサぴょん、とばっちり!

ウサギは「羽(わ)」で数えます。
鳥のように。
1羽、2羽、3羽、4羽、5羽……というように。

しかし、なぜ、ウサギは猫や犬のように「匹」ではないのでしょう?
その由来にはいくつかの説がありますが、仏教関連にこのような説があります。

日本の仏教では肉食が禁止されています。
肉を食べると穢(けが)れるというのがその理由です。
修行の身である僧侶の肉食は言語道断。
……とされていますが、それがどこまで守られていたのかは不明。
ただ、魚や鳥は食すことが許されていました。

しかし、食糧がとぼしいときには空腹の苦痛には抗えず……。
ウサギはぴょんぴょん跳び回ります。
鳥のように、ぴょんぴょん。
そこで、ウサギは鳥=みなし鳥ということで捕獲されてひそかに食されました。

みなし鳥ってなんなのさ!

あのウサギの可愛さの最たる理由の一つ、「ぴょんぴょん」が食される言い訳に利用されてしまったのです!

でもって、鳥とみなす=みなし鳥ということで、ウサギは鳥と同じ「羽」で数えるようになったのです。
(ただし、あくまでいくつかある説のうちの一つです)

「ぴょんぴょん跳んでるから、これって鳥じゃね?」
肉を食べたいばかりに(その気持ちはわかりますが)、「鳥」と思い込みたかった人間たちのエゴにより、ウサギはそのチャームポイントゆえ受難の時代を経験しました。




マーフィー小隊(ブラックオター)……ウサギの部隊章を持つティターンズの実戦テスト部隊

しかし、いまや、ウサギはペットとして、家族として、可愛がられる動物の代表の一つにまでなりました。
ウサギを愛する人間……その一人が、ウェス・マーフィー。

『ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに』の主人公エリアルド・ハンターが所属するのはT-3部隊。
T-3とは、TITANZ TEST TEAM/ティターンズ・テスト・チームの頭文字である三つのTのこと。
ティターンズの新型兵器テスト部隊がT-3部隊です。

★T-3部隊運用MS/MAの一例
RX-121 ヘイズル(ガンダムタイプ・ヘッドのジム・クゥエル改修機)
RGM-79CR ジム改高機動型(ジム改を強化したジムII採用試験機)
RGM-79SR ジム・スナイパーIII(ジム改高機動型の狙撃仕様カスタマイズ機)
YRMS-106 ハイザック先行量産型
NRX-004(R) キハール(アッシマー試作機の改修機)
ORX-005 フライルー(ギャプラン改修機)
RX-107 ダンディライアン(バウンド・ドックのベース機?)
RX-124 ウーンドウォート(ガンダムの新型試作機)

このT-3部隊の中心として、数々の最新鋭試作MS/MA等のテスト、場合によっては実戦テストを担当するのがマーフィー小隊。
その小隊長がウェス・マーフィー大尉。

マーフィー小隊所属MS/MAには、もれなくウサギの部隊章が描かれています。
戦場には似つかわしくない、癒やされなごむ愛らしいウサギたちが。
そのため、マーフィー小隊の通称は「ブラックオター」。
ブラックオターとは黒ウサギのこと、背面が黒で腹面が白い毛をしたウサギのことです。

このウサギの部隊章を発案した人物こそ、ウサギをこよなく愛する、腕利きのパイロットで、人徳があり、褐色の肌の大男で顔がちょっと怖いウェス・マーフィー。
いかつい顔に似合わぬ可愛いウサぴょん好きという見た目とのギャップが、けっこう良い味出しています。




ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに

『ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに』は、デラーズ紛争終了直後からグリプス戦役終戦までのU.C.0084-0088を舞台にしています。
『0083』の直後から『Z』最終回に当たる時代。

主人公サイドはティターンズ。
エゥーゴが主人公サイドだった『Z』とは逆陣営の物語です。

『ティターンズの旗のもとに』(2002~2007)は『電撃ホビーマガジン』で連載された小説と模型によるフォトストーリー作品です。
これを原作にした漫画作品も存在します。

主な登場人物は、マーフィー小隊の面々。

エリアルド・ハンターは主人公。
ほぼアースノイドで構成されるティターンズのメンバーには珍しいスペースノイド。
堅物と言われかねないほどにまじめで、正義感が強く、闘志を内に秘める青年。
物語開始時は新米パイロットでしたが、度重なる激戦を生き抜いてMSパイロットとして成長していきます。
中尉。
24歳(U.C.0084当時)。

カール・マツバラはエリアルドの戦友。
白人主体のティターンズには珍しい日系ハーフ。
明るく陽気、ちょっと皮肉屋のところがあるが根は素直な青年。
こちらも物語開始時は新米パイロットで、パイロットとしては最終的にはエリアルドにけっこう水をあけられた感じ。
中尉。
24歳(U.C.0084当時)。

オードリー・エイプリルはマーフィー小隊の紅一点。
前向きな性格で美人だが、けっこうきついところあり。
動物嫌いで、マーフィーのウサギ好きに悩まされました。
メカマニア。
不思議なくらいに小隊メンバーとの恋愛話なし。
(エリアルドと結ばれるのではないかと第1話の時点で予想していましたが、結局、艶っぽい話はいっさいなし。
エリアルドにも、カールにも、マーフィーにも恋愛話はなく、珍しいくらいに恋愛要素の少ない作品でした)
予備パイロット的な位置づけで、オペレーターを担当したり、必要に応じてMSやフルドドなどの支援機に搭乗しました。
中尉。
25歳(U.C.0084当時)。

ウェス・マーフィーはマーフィー小隊の隊長。
武骨。
人格者。
部下の面倒見良し。
凄腕のパイロット。
いかつい顔。
大のウサギ好き。
かつて、エイパー・シナプス大佐(『0083』)直属の部下で、デラーズ紛争において慕っているシナプスが命令違反のかどで(という名目で責任を転嫁されて)処刑されたことに強い不満を抱いている。
大尉。
30歳(U.C.0084当時)。




この空域にシャア・アズナブルがいるらしい……一戦交えてみたかったな……

ウサギ好きウェス・マーフィーにとって、シャア・アズナブルは一度は戦ってみたい相手だったようです。

U.C.0088年2月のエゥーゴ、ティターンズ、アクシズのコロニーレーザー「グリプス2」周辺での三つ巴の最終決戦の序盤。
マーフィーとエリアルドは、ギャプランの改修機であるTR-5 フライルーに搭乗して戦場を駆け巡っていました。

マーフィーの標的はシャア・アズナブル。
一年戦争の伝説的なMSパイロット「赤い彗星」のシャア。
クワトロを名乗っていたシャアは、「ダカール演説」によって自らがシャアであることを明かし、ジオン・ズム・ダイクンの息子であることを明かしました。
それにより、エゥーゴの実質的指導者であり、かつエゥーゴのシンボル的存在になりました。

そのシャアを、マーフィーは戦場を馳駆(ちく)して探します。

「この空域にシャア・アズナブルがいるらしい。おまえ、金色のモビルスーツを見なかったか?」

エリアルドにそう訊ねるマーフィー。
しかし、エリアルドに心当たりはありませんでした。
結局、戦場でシャアと遭遇することはありませんでした。

「一戦交えてみたかったな……」
マーフィーは、そう呟いたといいます。

(以上、セリフは『ADVANCE OF Z~ティターンズの旗のもとに~ Vol.1』メディアワークスを抜粋しました)

ここに、マーフィーのMS乗りの性(さが)があらわれていて、わたしはマーフィー関連ではここが一番好きな場面です。
「赤い彗星」という強い敵と手合わせしたい、そんな素朴な戦士としての願望に、わたしはマーフィーの好ましい純粋さを見るのです。



シャア・アズナブル……言われているほど「赤」ではない「赤い彗星」(『機動戦士ガンダム』)



赤い彗星のMS……赤、赤、赤、青、赤、金、赤

シャア・アズナブルのMSが赤い色(あるいはピンク)に塗装されている理由に定説はありません。
さまざまな推測がなされています。

比較的優勢な説は、私見によれば二つ。
一つは、国威発揚のためにシャアのMSを(ザビ家の誰かが)目立つカラーである赤に塗装させたというものです。
ルウム戦役の英雄を士気高揚に利用しようという意図のもと、シャアのザクが赤く塗装されたというもの。
もう一つは、シャアのMSでの戦功、あるいは公国をしょってたつ将来性が高く評価されてパーソナルカラーを認められ、シャア個人の趣味として赤(とピンク)を選択したというものです。
派手なカラーリングは被発見率が高く、標的になりやすいという弱点があります。
ただ、敵味方に著名な凄腕のパイロットの機体であるなら、その派手さゆえに、敵に精神的なプレッシャーをあたえ、かたや味方を安心させ、その士気を鼓舞することができます。
そのような効果を狙って公国はパーソナルカラーの赤をシャアに認めたのではないかという説です。

なかには、異説(奇説?)もあります。
シミュレーションゲーム『ギレンの野望 ジオンの系譜』(1998年発売)では、あの赤は下地塗装のサビ止め塗料の赤だとの説が開陳されています。
士官学校を首席卒業したエリートのシャアに嫉妬した機材担当者が、サビ予防の下地塗装しか施していない機体を渡したというものです。

もしかしたら、これは、ゲームブック『最期の赤い彗星』(1986年発売)の影響かもしれません。
この作品は、ア・バオア・クー陥落直後、数人の部下たちとともにマ・クベの旗艦グワジン級宇宙戦艦「アサルム」を奪ってア・バオア・クーを脱出、シャアがアクシズへ向かう物語です。
この作品でシャアが搭乗するMSの一つが、MS-06R-2 高機動型ザクII(R-2型)の5号機(実際は、R-2型は4号機までしか存在しません)です。
この機体は赤色ですが、シャア専用のMSではありません。
サビ防止塗料を塗ったため赤色に見えるだけ。
シャアが脱出の途中発見して乗り込んだMSが、偶然赤だったという設定です。
それによって、シャアのMS=赤というお約束を守りつつ、「ジオン敗戦の混乱した脱出時になぜシャアが都合良く赤いMSに乗ることができたのか、それは単にサビ止めの下地塗装をしただけのMSだから赤かったのだ」と合理的に説明するための苦肉の設定だったのかもしれません。

どちらにしろ、ゲーム設定は公式ではないので、依然謎のままです。

シャアの愛機(一時的に搭乗したルッグンやガンダムMk-IIなどはのぞきます)のなかにも、赤く塗装されていないMSはあります。
ジオングと百式です。

ジオングは、ゲルググを中破させて戦闘不能になったため、急きょ乗り込むことになった機体であるためダークブルーとブルーの機体であることはやむをえないでしょう。
(左右の角と耳下?だけ、赤だったりしますが)

『Z』の百式は、塗り替える時間も機会あったはずですが最後まで金色で通しました。
シャアのMSなのに赤じゃない?と疑問に思った方も多いことでしょう。
これは、富野由悠季監督が「シャアの赤色というのはもう古いんじゃないか、黄金のシャアにしよう」(抜粋:「別冊アニメディア 機動戦士Zガンダム 完全収録版」学研、1986)ということから金色の塗装にされたとのこと。
あとから、百式の命名は設計者M・ナガノ博士が「百年後も通用する設計」と高言したことに由来し、そのため機体色も永遠を意味する金が採用されたという設定が生まれたようです(『THE OFFICIAL GUNDAM FACT FILE No.8』ディアゴスティーニ)。
もう一つ後付けで、金色塗装の合理的説明として優秀な耐ビームコーティングを施してあるからという設定もつくられました。

しかし、その「古い」はずの赤いシャア専用MSが『逆襲のシャア』では復活しました。
サザビーです。
富野由悠季監督の心境にいかなる変化が?
あるいは圧力?

ともあれ、シャアは百式の時点で、優秀な耐ビームコーティングのために愛機を赤色に塗装することを断念しました。
シャアの赤へのこだわりは、その程度だったのでしょうか?

しかし、シャアが赤に愛情を持っているのかどうか疑わしい事実は他にもありました。
私服です。
シャアの私服です。

シャアの私服は、ほぼレッド/ピンク関係とは無縁なのです。
わたしの調べた範囲のなかでは、レッド/ピンクは一例のみ。
赤いネクタイとピンクのシャツのあのときのみ……。

ではシャアの私服の色の組み合わせ一覧を……その前に、ほぼ赤系統で統一された軍服/ノーマルスーツから見てみましょう。




赤い彗星の軍服……赤、赤、赤/ノーマルスーツ……赤、赤、黄

シャアは、軍服に関しては一貫して赤を通しています。
『ガンダム』『Z』『逆襲のシャア』皆勤賞です。
100%。
ただし、『逆襲のシャア』では2種類の軍服があり、モノレール搭乗時に着用していたコート型の軍服ははっきりと赤なのですが、演説や外交交渉に臨むときのマント付きの軍服は赤茶色に見えなくもありません。
たぶん、濃い赤色ということなのでしょう。

ノーマルスーツも、『Z』までは赤系統のみでした。
『ガンダム』第2話でサイド7に潜入を果たすときにはじまり、ルナツー潜入、そして唯一、戦闘中にノーマルスーツを着用したア・バオア・クー。
『Z』では第1話のグリプス潜入から、最終回にいたるまで戦闘中は赤いノーマルスーツを着用しつづけました。
しかし、『逆襲のシャア』でついに赤いノーマルスーツの歴史は途絶します。
総帥用の特注のノーマルスーツを着用しますが、色は黄色です。
金髪に合わせでもしたのでしょうか?
それとも、30歳を超えたシャアは、さすがに派手な赤いノーマルスーツは気恥ずかしくなった?
(とはいえ、軍服は赤のままですが)

ちなみに、クェスはシャアとお揃いの小さいサイズの特注ノーマルスーツを着用していますが、そのカラーは赤でした。
モノレール搭乗時の軍服も、クェスはシャアとお揃いの軍服を着ていますが、こちらはシャアも赤、クェスも赤のほぼ完璧ペアルック。
『逆襲のシャア』では、プライベートで愛人のナナイとお揃い?のバスローブを身に着けていますが、バスローブの色はシャアが薄い青、ナナイが赤でした。
周囲の女性に赤い着衣をまとわせる趣味がシャアにはあった?




赤い彗星の私服……赤系統たった一例、青系統と黄系統多し

問題は、私服です。
私服のレッド/ピンク系統は、たった一度のみ。
ネクタイが赤、シャツがピンク。
酒場でギレンのガルマ追悼演説に耳を傾けていた(適当に聞いていただけのような気もしますが)ときの服装だけです。
(ただし、わたしの確認した範囲内ではであり、もしかしたら漏れがあるかもしれません)


『ガンダム』
キャスバル家出     :コート(ブラウン?)
酒場、ギレンの追悼演説 :ネクタイ(赤)、シャツ(ピンク)、スーツ(白)

『Z』
アクシズ、ハマーンと  :ネクタイ(淡い緑)、シャツ(白か淡い青?)、スーツ(青)
月のアンマン      :シャツ(白)、ベスト(淡い紫)、コート(紫)、ズボン(淡い紫)、ブーツ(黒?)
ダカール、ブレックス暗殺:マフラー(白か淡い青?)、コート(青か黒?)
ダカール演説      :ネクタイ(黄)、シャツ(淡い青)、スーツ(青)

『逆襲のシャア』
サイド1のロンデニオン :ネクタイ(ブラウン?)、シャツ(淡い黄)、スーツ(黄)、ズボン(黄)、靴(黒?)
スウィートウォーター   :インナー(淡い青)、バスローブ(淡い青)、スリッパ(淡い青?)


いかがでしょうか?
個人の趣味がもっとも反映されるものの一つであろう私服にレッド/ピンク系統のものがこれだけ少ないのは、わたしには意外でした。
軍服やノーマルスーツやMSとちがい、私服では青系統が優勢です。
シャアはもしかしたら「青い彗星」になりたかったのでは?
あるいは『逆襲のシャア』でノーマルスーツ、私服のスーツ、シャツ、ズボンともに黄色だった……それは自分の髪の毛である金髪を、引いては亡き母の金髪、その娘である妹セイラの金髪をほうふつとさせるやもしれぬ黄色を好んでいたのでしょうか?
マザコンであることが『逆襲のシャア』で確定したシャアなら、その可能性もまんざら否定できないのではないでしょうか?
それとも、赤はここぞというときのために温存しておくとっておきの大切な色だったのでしょうか?
シャアの意中の色はいずれにありや?



エルメス……悲劇が付きまとうMA【ララァ・スン、クスコ・アル】(『機動戦士ガンダム』)


エルメス……悲劇、悲劇、悲劇

MAN-08 エルメスは、3機が試作されました。
エルメスは、一年戦争時代(U.C.0079)のニュータイプ専用MAです。

『機動戦士ガンダム 公式百科事典』(講談社、2001)からエルメスの項を抜粋してみます。


「なお、MAN-08は試作機が3機製作され、ララァ・スン少尉が搭乗したものは2号機であるという。
1号機は、パイロットが機体の要求するニュータイプ能力を有していなかったため、暴走したビットの攻撃で自爆したとされる(テスト中にも多数のビットが制御を失い、行方不明となったという)。
また、3号機はクスコ・アル少尉によって操縦され、実戦に投入されたというが、これは信憑性に欠けるといわざるを得ない。
この説によればクスコ・アル少尉はシャア・アズナブル大佐の指揮したニュータイプ部隊の一員であったことになっているが、その存在は確認されておらず、ララァ・スン少尉出撃前後の状況から見ても、実在は甚だ疑わしい」


クスコ・アル少尉は、小説版『機動戦士ガンダム』(著・富野喜幸(現在の富野由悠季))に登場したエルメスのパイロットです。
小説版設定ですので、アニメ作品を基準にする『ガンダム』の公式設定からは「信憑性に欠ける」とコメントされているわけです。

なお、クスコ・アルの搭乗したエルメスは、小説版だと2号機、MSV設定では3号機でした。
ララァの乗るエルメスが2号機というのはMSV設定です。
MSVでは1号機/ビットの攻撃で戦死したパイロット(名前不詳)、2号機/ララァ・スン、3号機/クスコ・アルということになります。

この3人、皆が皆、不幸な運命をたどることになります。




エルメス1号機のパイロット……不足していたニュータイプ能力

1号機のパイロットは、実戦でなく実験中に戦死しました。
ニュータイプ能力者ではありましたが、エルメスを制御できるほどの能力には恵まれず、本来なら自分の強力な武器になるはずのビットの攻撃を受けて亡くなりました。

なまじ、ニュータイプ能力があったがための悲劇と言えましょう。




ララァ・スン、クスコ・アル……エルメスでの戦死、性的な被害

ララァとクスコ・アルは、それぞれ、アニメ版と小説版を出自とするキャラクターですが、特徴的な共通点が2人にはあります。

まず一つ目、二人ともエルメスに搭乗して戦死しています。
相手は二人ともアムロ・レイ。
それぞれ、アニメ版のアムロと小説版のアムロに撃破されています。

二つ目。
ララァもクスコ・アルも、性的な被害者でした。
クスコ・アルは、連邦の兵士に性的暴行を受けた過去があるようです。

ララァは、インド地区の売春宿で生きるために身をひさいでいたといいます。
むろん、ララァが望んでの売春ではないでしょう。
孤児である貧しい少女のララァは、身をひさいで生計をたてなければならなかったのです。
ただ、ララァは売春宿にはいたものの、客を取る前にシャアによって救い出されたという説もあります。
また、公式であることを謳っている(とはいえ、本当に公式なのかは不明ですが)『GUNDAM FACT FILE No.1』(デアゴスティーニ、2004)では、「むやみやたらに客を取らされるようなことはなく、相応に自尊心を持てるような環境だったようだ」とのことです。
この文言はあいまいです。
「むやみやたらに」ではないものの「客を取らされ」てはいたとも読めますが、いかがでしょうか?
それとも、「むやみやたらに」客の相手をさせるようなひどい待遇は受けず、まったく「客を取らされるようなことはな」かったということなのでしょうか?
「相応に自尊心を持てるような環境」の「相応」の「自尊心」というのも、「相応」の程度があいまいで、まったく「客をとらされ」なかったので「自尊心を持て」たのか、「客を取らされ」たものの人数や性交の態様においてひどい条件ではなかったので「相応に自尊心を持て」たのか、いまひとつ不明です。

もし、「客を取らされ」ていたのであれば、そうひどい環境に置かれていなかったとはいえ、なにがしかの性的な被害は受けていると申してよろしいかもしれません。
そうであるなら、ララァとクスコ、二人のエルメスパイロットはその点でも共通点を有していることになります。

エルメスのパイロットには、深い悲劇の影がつきまとっています。




ゲームの中のエルメス……幻の4号機、幻のエルメスパイロット

エルメスは、アニメ作品、小説版のほかにもゲーム『SDガンダム GGENERATION』にも登場しています。
こちらではエルメスは4機。
1号機がララァ、2号機がクスコ・アル、3号機(白)がハマーン・カーン、4号機(赤)がセレイン・イクスペリ(ゲーム・オリジナルキャラクター)。
ただし、ゲーム作品ですので、公式の世界ではこの設定は「幻」ということになるでしょう。
「幻」の4号機。
「幻」のセレイン・イクスペリ。

ハマーンは、『ZZ』で第一次ネオ・ジオン抗争最終局面においてキュベレイを駆りジュドー・アーシタのZZガンダムと一騎打ち、その果てに戦死しました。
セレインは、ゲームの中で、グリプス戦役時、エゥーゴにMAテラ・スオーノを撃破されて戦死しています。
(ただし、セレインは選択によっては生還するシナリオの分岐あり)
やはり、エルメス搭乗経験者は、みな、最期は戦死する運命にあるのです。




エルメス

型式番号:MAN-08
タイプ :ニュータイプ専用試作型モビルアーマー
全長  :47.7m
全高  :85.4m
本体重量:163.7t
全備重量:291.8t
装甲材質:超硬スチール合金
開発基地:グラナダ
武装  :メガ粒子砲×2(防衛用)
     ビット×10(あるいは、×10前後、×12)(攻撃兵器)
異名  :ソロモンの亡霊
     チューリップ
     トンガリ帽子