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『機動戦士Zガンダム ジェリド出撃命令』序  ゲームブックあらすじ/解説(『機動戦士ガンダム0087 ジェリド出撃命令』)



■目次
1. ジェリド・メサとグリプス戦役
2. ゲームブックなので、公式性は低い
3. ジェリドが主役
4.機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』との関係

『ジェリド出撃命令』1へ
『ジェリド出撃命令』2へ
『ジェリド出撃命令』3へ
『ジェリド出撃命令』4へ
『ジェリド出撃命令』5へ



1.ジェリド・メサとグリプス戦役
U.C.0087年3月2日~0088年2月22日。
この一年弱のあいだが、「グリプス戦役」の期間に当たる。
同時に、ジェリド・メサからすると、カミーユに殴られた因縁の始まりの日~カミーユに敗れて戦死する没年月日に該当する。

順風満帆だったジェリドのエリート人生が、崩壊した時期にぴったり符合する。
カミーユとグリプス戦役が、ジェリドに災厄をもたらしたのだ。

裕福な軍人名門家庭に生まれる
士官学校でトップエリート
エリート部隊ティターンズのメンバーに
ティターンズの象徴になる予定だったガンダムMk-IIのテストパイロットにエマ・シーン中尉カクリコン・カクーラ中尉とともに抜擢

輝かしい経歴のうえに、美男子で、195cmの長身、屈託のない性格で友情にも厚いという非の打ちどころのない青年だった。
この超のつくエリートが、屈辱にまみれ、親友や恋人などすべてを失い、ライバルに敗れて散っていく……それがジェリド版『Z』だろう。
超エリートの挫折と転落の物語である。

25年の人生だった。
[ジェリドの誕生月日は不明]
[U.C.0063年生まれなので戦役勃発時点で24歳]
[ほぼ一年後の戦役終了時点では25歳の可能性が高いが、もしかしたら、ぎりぎり24歳だったかもしれない]


戦役勃発に先立つこと二か月弱前……U.C.0087年1月10日~1月12日までの出来事が『ジェリド出撃命令』で語られる。
ジェリドが亡くなる、およそ一年と一月前の出来事である。

もしかしたら、ジェリドにとっては人生最後の栄光につつまれた時代に『ジェリド出撃命令』は当たるかもしれない。
その二か月後から起きる幾多の苦難、そして一年と一月後の敗北による戦没がすぐあとに控えているのだ。
しかし、『ジェリド出撃命令』にはそのような不幸を予感させるものはなにもない。

前途は洋々として、ジェリドこそ運命に見初められた世界の主人公であるかのような輝きに満ちている。
没落の直前の至福のとき……その時代を描いた作品が『ジェリド出撃命令』なのかもしれない。

むろん、苦難や試練は山ほどあったが、人生でもっとも充実していた時期がグリプス戦役のときだったという解釈はありだろう。
難局のときこそ生の充実を感じるというのは、それなりに耳にするはなしである。
マウアー・ファラオライラ・ミラ・ライラと出会ったのも、グリプス戦役のときである。
ジェリドにとってグリプス戦役が幸福だったのか不幸だったのかは、ジェリドの気持ちの持ちよう一つにかかっているのかもしれない。
それは、ジェリドのみぞ知る。

ただ、傍から見ていると、ジェリドにとってグリプス戦役は敗北と屈辱とに彩られた不幸にしか見えない。
この意見に賛同くださる方は、かなり多いと思われる。

その観点からいくと、戦死するまでの不幸な時代の、それよりほんのちょっと前の幸福な時代を描いたのが『ジェリド出撃命令』なのかもしれない。

この作品では、ジェリドこそが名実ともに主人公。
ゲームブックらしく、冒険とロマンと戦いの物語の世界の中心である。
本編『Z』の主人公カミーユ・ビダンよりも、主人公らしい主人公として描かれている。
苦悩多く(ヒステリーですらあり)、精神崩壊してしまうTV版のカミーユよりも主人公らしいと自分には思えた。
(カミーユのそのナイーブさには、大いに共感するが)

ジェリドが世界の中心の物語……『ジェリド出撃命令』はかなり明るくロマンあふれる物語なのだ。


2.ゲームブックなので、公式性は低い
『ジェリド出撃命令』はゲームブックなので、公式性は低い。
アニメ作品になれば「宇宙世紀」の公式にほぼ確定である。

ただし、『THE ORIGIN』や『サンダーボルト』は世界観が違いすぎるため、製作者認定のパラレル作品扱いをされている。
『MS IGLOO』も全編CGという理由もあるかもしれないが、設定に公式との乖離(かいり)が大きいためパラレル扱いをする人はけっこう多い。

マンガ・ゲーム・小説などにも強く支持されている作品はあまたあるが、公式扱いに躊躇する人は多い。
これらは、個人色が強く公式との世界観に整合性を取れないことが多い、それも公式認定をためらわせる一因である。

ゲームブックとなると、なおさらである。
選択肢により、物語の途中経過はさまざま。
それどころか結末ですら多様。

たとえば、ジェリドがグリプス戦役勃発前に戦死することすらある。
最後の戦いに勝利しても、エマカクリコンが戦死してしまうと、精神的な疲労から勝利ののちに息を引き取ってしまう。
公式との食いちがいは大きい。

そんなわけで、この『ジェリド出撃命令』は『Z』本編とはまったく無関係の可能性が高い。
ただし、正式の「U.C.ガンダム」の歴史かどうかを最終的に決めるのは、個人の判断如何ということになるのはもちろんである。

自分個人としては、『ジェリド出撃命令』は「参考程度」であることを前もってお断りしておく。


3、ジェリドが主役
『ジェリド出撃命令』は1987年に発売された。
ガンダムでいうと、『逆襲のシャア』が公開された年である。

正直、カミーユに完敗した(自分は、それほどジェリドがカミーユに対し劣勢であったとは思っていないが)ジェリドが主役である。
カミーユの最強のライバルの座を、あとから(10話)出てきたシロッコにもっていかれたジェリドである。

当初より、企画書にはシロッコが最強にして最後の敵であることは定められていた。
しかし、1話から登場し、カミーユの最大のライバル然としていたジェリドが凋落した印象は強い。
最大のライバルの座を横取りされた、最大のライバルの座から蹴落とされたという印象が拭えない。

そのため、さほど人気があるキャラクターというわけでもない。
不人気というわけではないが、強く支持されていたのかと言われれば首を傾げざるをえない。
そのキャラクターを、TV放送終了の86年2月22日から一年以上たった87年6月発売のゲームブックの主役にしたのはなぜなのだろう?

疑問である。
しかし、『ジェリド出撃命令』を読んでみると、ジェリドは主役がサマになっている。
考えてみれば、ライラカクリコンが殺されるまでは、直情的ではあるが、気の良いところもあるけっこう明るい青年なのである。

鬱屈したカミーユや人間味に乏しい冷たい白面の男シロッコよりも、主役的な性格やルックスをしていないだろうか?
24歳という年齢がTV版のガンダムシリーズではネックになるが、それ以外は、ジェリドは主役に適合しているような気がする。

ジェリドを主役にした『機動戦士××ガンダム』『機動戦士ガンダム ××』。
そんなものを、『ジェリド出撃命令』は夢想させてくれる。


4.『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』との関係
『ジェリド出撃命令』の舞台はアラスカ。
『ポケットの中の戦争』の第一話冒頭、サイクロプス隊が襲撃した連邦軍北極基地は比較的近いところにある。

『ジェリド出撃命令』の8年前、ジェリドが冒険をした比較的近くにサイクロプス隊がその足跡を残している。


87年に発売された『ジェリド出撃命令』は89年11月に復刻増補版が出版されている。
『ポケットの中の戦争』が89年3月から8月までリリースされたので、余熱いまだ冷めやらずという時期に発売されたわけである。

本作は、87年に『機動戦士Zガンダム ジェリド出撃命令』のタイトルで出版された。
しかし、89年に再販されたときには『機動戦士ガンダム0087 ジェリド出撃命令』に改題されている。
しかも、表紙のタイトルは前者が『ジェリド出撃命令』を大文字で強調しているのに対し、後者は『ガンダム0087』を大文字で強調している。
これは、『機動戦士ガンダム0080』と関連づけるためなのだろうか?

さらに、表紙のイラストにも疑問がある。
87年版は、ジェリドとその背後に敵MSであるドゥラ(ドゥーラ)が描かれていた。
89年版は、背後にジェリドと、その手前にジェリドの愛機として選択することができるPMS-106 ハイザックが描かれている。
ジェリドの愛機が表紙に描かれるようになったのは、むしろ、真っ当なことである。
『Z』のジ・オによく似た敵MSのイラスト(ジ・オのデザイナーである小林誠が担当)が表紙を飾るよりはずっと真っ当であろう。

ただ、わたしは憶測してしまう。
『0080 ポケットの中の戦争』の主人公の一人、バーニィの唯一の愛機であるMS-06FZ ザクII改を意識してはいまいかと。
ザクII改とハイザックは同じザク系のMSのなかでも、良く似ているようにわたしには思える。
実際、89年版の表紙のハイザックは、見ようによってはザクII改に見えなくもない。
これもまた、いまだ余熱冷めやらぬ『ポケットの中の戦争』に関連づけようとしたのだろうか?

(86年に発売されたゲームブック『機動戦士ガンダム 灼熱の追撃』も似たようなことが。
89年9月発売の再販版のタイトルは『機動戦士ガンダム0079 灼熱の追撃』に改題。
86年版では『灼熱の追撃』を大文字で強調。
89年版は『ガンダム0079』を大文字で強調している。
また、両者ともにザクIIが表紙だが、89年版のザクIIは形も色もザクII改にそっくりのような……)

(89年3月20日に、ゲームブック『機動戦士ガンダム0080 消えたガンダムNT』が発売されている。
これは、クリスが主人公。
バーニィアルも登場する。
しかし、アニメ版とはまったく違う物語が展開する。

表紙は、この作品も『ガンダム0080』の部分が大文字で強調されている。
表紙はクリスと、その後ろにMS-06FZ ザクII改。
クリスの乗機であるRX-78-NT1 ガンダムNT1/アレックスではない。
ここにも『ガンダム00××』が大文字で強調され、ザク系のMSが描かれるという共通点がある。

もちろん、この作品は『0080』がテーマだから、『ガンダム0080』の部分が強調されるのは当然のことである。
ザクII改も、もちろん、『0080』の主人公の一人であるバーニィの乗機であるから表紙に描かれるのは不思議ではない。
ただ、他の二つのゲームブック作品のタイトル改題と表紙には、『0080』との意図的な結びつきを感じてしまうのだが)

『ポケットの中の戦争』が尋常でないくらい好きなわたしとしては、大いに気になるところである。
好きすぎて目が曇り、無理に関連づけようとしているのかもしれないが……。


『ジェリド出撃命令』1
『ジェリド出撃命令』2
『ジェリド出撃命令』3
『ジェリド出撃命令』4
『ジェリド出撃命令』5


(参考文献:『機動戦士ガンダム 一年戦争外伝 データコレクション3』メディアワークス、『機動戦士Zガンダム 下巻 データコレクション5』メディアワークス、『機動戦士Zガンダム大事典』ラポート、『機動戦士Zガンダム 完全収録』学研)

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