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『アニメ三銃士』は明るくて楽しいけど……本当は暗くて悲しい『三銃士』



『アニメ三銃士』はもとの『三銃士』にあらず


『アニメ三銃士』も『ワンワン三銃士』、子供版小説『三銃士』も明るく夢に富んだ作品ですが、アレクサンデル・デュマ原作『三銃士』は暗く悲しい作品でした。

『アニメ三銃士』(1987~1989)。
全52話。
NHKで放送。

17世紀のフランス。
ルイ13世(在位1610~1643)の治世。
王家をめぐる陰謀に、地方出身の少年ダルタニャンが大活躍する。
「三銃士」とは、銃士隊におけるダルタニャンの先輩であるアトス、アラミス、ポルトスたちのこと。
ダルタニャンを含めて「四銃士」ということもある。




主題歌『夢冒険』(歌:酒井法子)……栄光と翳り


当時はけっこう話題だった『アニメ三銃士』ですが、いまや忘れられた作品。
もしかしたら、主題歌をおぼえている人はそれなりにいるかもしれません。
『夢冒険』。
この歌は、88年の春の選抜高校野球大会の入場行進曲となったことでも有名です。

歌手も超有名人。
当時、人気絶頂だったアイドル・酒井法子(さかいのりこ/愛称のりピー)が歌っていました。
いまだと、2009年覚せい剤使用で逮捕された印象が強いでしょうか。
「心に冒険を 夢を抱きしめたくて」「心に冒険を 夢が聴こえるよね」など、夢と希望に満ちた『夢冒険』を歌っていた酒井法子が覚せい剤を常用。
アイドルにはまったく興味がなく、酒井法子はわたしにとってほぼ『夢冒険』の人でしたが、乗りの良いこの歌を良く口ずさんでいました。
その酒井法子の逮捕は残念でした。
明るい「のりピー」のイメージとはちがい、私人の酒井法子の生い立ちは暗く悲惨で、覚せい剤を常用しなくてはやっていられない精神構造をしていたのかもしれません。
酒井法子は、運命の犠牲者だったのかもしれません。




主人公ダルタニャンとヒロインのコンスタンスは不倫


『アニメ三銃士』のヒロイン・コンスタンスは、パリ一番の仕立屋であるボナシューの愛娘。
主人公のダルタニャンは、その清純なコンスタンスに一目惚れ。
清く正しい恋の道を突き進みます。

しかし、原作では二人の関係は「不倫」。
年老いたボナシューの若い妻であるコンスタンスは、若い愛人であるダルタニャンと逢瀬(おうせ)をかさねます。
原作『三銃士』は、主人公とヒロインの「不倫」だけでなく、いたるところに不倫関係が。
もちろん、この部分は子供たちが観る『アニメ三銃士』ではカットされています。




コンスタンス毒殺


『アニメ三銃士』のコンスタンスは、いくつもの危機を乗り越えて物語の最後まで生命をまっとうします。
ヒロインが殺害されるアニメを、NHKで放送できるわけはありません。

しかし、原作『三銃士』では毒殺。
フランス王妃(夫はルイ13世)の忠実な侍女であったコンスタンスは、それゆえに政治の陰謀劇に巻き込まれ、反王妃派によって毒殺されてしまいました。
ダルタニャンは、年老いたボナシューが死んだあとコンスタンスと結婚するつもりだったのかもしれませんが、それはかないませんでした。
ダルタニャンは、愛する女性を殺害される悲劇の青年だったのです。




三銃士のリーダー・アトスはアル中


『アニメ三銃士』において、アトスは三銃士のリーダーとして知恵深く人徳ある完璧人間として描かれています。

原作『三銃士』でも、たいへん有能なリーダーであることに変わりはないのですが、いかんせん、アルコール中毒でした。
元妻に裏切られてアルコールに逃げてしまったのです。
映画『三銃士』(1973)では、アトス役の名優オリヴァー・リードが昼間から酒場で豪快に酔いつぶれているシーンが印象的。
わたしにとっての、映画のなかでの泥酔シーンBEST3の一つ。
90年代に観たきりですが、いまでも、酒に酔ったときはこのときのアトスのことを思い出すことがあります。
酒に酔い夢の世界をさまよっているさまは醜くも迫力があり、酔いしれているときのみわたしはアトスになったような気分になります。




男装の麗人アラミスは、原作では男で女たらし


『アニメ三銃士』でアラミスは大人気でした。
凛とした美男子。
しかし、じつは女性で、男装の麗人でした。
大傑作『ベルサイユのばら』のオスカルのように、気高く凛々しく、ちょっと陰のある中性的な女性。
当時の女性アニメファンに、宝塚的な感じで熱狂的に支持されたのがアラミスでした。

しかし原作『三銃士』では、男、しかも女好き。
ただ、かなりの美男子で、教養もあり、詩もたしなむ才人でした。
言い寄った女性を、その美貌と優雅さと知性でとりこにしてしまいます。

『アニメ三銃士』アラミスのストイックさに惹かれた女性ファンの目に、原作アラミスはどう映ったでしょうか。
映画『三銃士』(1973)では、美男子リチャード・チェンバレンが品のあるアラミスを演じていましたが、まちがいなく女たらしでした。




映画『三銃士』……剣での闘いはヘロヘロ


『アニメ三銃士』に限らず、剣の闘いのシーンは軽快この上なし。
剣を縦横無尽に振り回して大活躍します。

しかし、映画『三銃士』(1973)では、剣での闘いが長引くと、ぜいぜいはあはあ息を荒げてヘロヘロになりながら剣を打ち合わせるといったリアルな描写がなされていました。
これは当然です。
剣は、その重さによって敵を叩きのめします。
槍は突いて殺す、剣は叩き殺す。
その重い剣を振り回しているのですから、息が上がるのは当然。
ヘロヘロな描写はかっこうの良いものではありませんでしたが、事実に裏打ちされた迫力と、リアルに根差した妙な説得力がありました。

いまはなきアニメ雑誌『OUT』は、本放送のとき『アニメ三銃士』の特集を組んでいます。
このとき、1973年版映画『三銃士』を取り上げ、息を切らして闘うそのリアルさを絶賛していました。




『アニメ三銃士』と原作『三銃士』


小学5年~中学3年までの悲惨な学校生活とは打って変わった、充実した高校の学校生活。
大学受験の夢を追いかけ、張りのある毎日でした。
その高校時代から、大学受験を急ぎすぎ、受験勉強のために高校(雰囲気の良い高校でしたが偏差値がかなり低く、大学受験には不向きでした)を中退した時期に『アニメ三銃士』は放送していました。
激動の時代、夢中になっていたアニメの一つでした。

『アニメ三銃士』など、我々が知る『三銃士』のほとんどは、ソフトな肌触りに変えられています。
そのため、広く一般に『三銃士』は親しまれているのですが、原作や1973年版映画『三銃士』にもまた別の魅力があります。
暗く悲しい『三銃士』も、たまにはいかがでしょうか。


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