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大手町駅……大手町ウォーズ【『アニメワールド・スターチャイルドステーション』栃木放送】



大手町ウォーズ……ラジオの中の戦争


「大手町ウォーズ」という言葉を耳にしたのは、中学1年か2年(1984~86)のときでした。
『アニメワールド・スターチャイルドステーション』(1982年11月~87年3月)という栃木放送をキー局とするアニメラジオにおいてです。

発言者は、声優の神谷明(かみやあきら。代表作『キン肉マン』キン肉マン、『北斗の拳』ケンシロウ、『うる星やつら』面堂終太郎.etc)。

大手町駅は、東京の地下鉄駅ではもっとも多い5路線が通っているマンモス駅です。
丸ノ内線、東西線、千代田線、半蔵門線、三田線の5路線。
さらに、これまた大きな駅である東京駅とも複数の地下通路でつながっています。
しかも、大手町(東京都千代田区)は日本経済の中心地であり、丸の内とともに日本屈指のオフィス街を形成しています。

ですから、とくに朝のラッシュ時の乗り換え人数、乗降人数がすさまじい。
これを指して、戦争のようなあわただしさということで「大手町ウォーズ」と呼んでいたようです。
この「大手町ウォーズ」、神谷明さんの周囲でだけ通用する造語なのか、それより広い範囲でも通用するのか不明です。
ただ、すくなくとも神谷さんの周囲の仲間内(声優仲間か? もっと広くアニメ業界仲間か? はたまた、仕事関係以外の仲間か?)では、大手町のラッシュ時のすごさを「大手町ウォーズ」と表現していたようです。

アニメが好きなわたしにとって、憧れの声優さんの発した聞きなれない単語はミステリアスでした。
わたしは生まれも育ちも栃木県で、東京に行くのは台東区に住んでいた従兄妹や伯母の家をおとずれるときくらい。
東京は、親戚の自宅周辺や、良く連れて行ってもらった浅草の遊園地・花屋敷などをちょっと知っている程度。
それも、小学校中学年のころに親戚が東京から引っ越したので、それ以来、東京にはまったく縁のない生活を送っていました。

そんな、ほぼ未知の世界である東京。
そこで営まれているラッシュ時の「大手町ウォーズ」なるものは、中学生のわたしの想像のなかで、なにやら大人の世界の神秘的なにおいに満ち満ちていました。




大手町ウォーズ……東西線にも戦争の余波が


90年代前半、大学進学のため上京しました。
アパートは東京都江戸川区西葛西。
西葛西には東西線が通っていて、わたしの通う大学は東西線沿線にあり、そのため乗り換えの必要はありませんでした。

ただ、「大手町ウォーズ」の一端は、東西線に乗車していても体験することはできました。
西葛西と大学最寄り駅の中間あたりに大手町駅があるのですが、朝のラッシュ時に、大手町駅で大量の乗客がどっと降り、乗客が降り切ると今度はどっと寄せる波のように大勢の乗客が列車に乗り込んできます。

降りた人たちは、東西線以外の四つの地下鉄か東京駅のJR線などへ乗り換える、あるいは大手町のオフィス街へと上陸する人たちでしょう。
乗り込んできた人たちは、四つの地下鉄か東京駅のJRなどから東西線に乗り換えた人たちでしょう。

列車が盛大に吐き出し、ついで勢いよく呑み込むあまりの乗降客の多さに、大手町で起きている「戦争」のすさまじさはある程度、推し量ることができました。




大手町ウォーズ……ついに戦争の渦中へ


大学生のとき、頻繁に故郷の栃木に戻っていました。
授業を終えた金曜午後に大学最寄り駅を出て、大手町で地下鉄東西線から地下鉄千代田線に乗り換え、さらに北千住で東武線に乗り換えて栃木に向かうのです。
月曜の早朝にはその逆、始発列車の東武線に乗って北千住へ、そこで千代田線に乗車して大手町駅で東西線に乗り換え、そこから直接大学へと向かいます。

このとき、大手町駅は朝のラッシュとかさなります。
そのとき初めて、わたしは「大手町ウォーズ」の只中へと踏み込んでいくことになりました。
『アニメワールド・スターチャイルドステーション』で「大手町ウォーズ」の言葉を耳にしてから、7、8年の歳月がたっていました。




大手町ウォーズ……大手町駅の通勤ラッシュは戦場だった、というより冥府の死者の行進か


千代田線から東西線まで乗換所要時間は4分(「乗換案内NEXT」参考)。
建造物のなかの通路の4分というのは、けっこうな距離です。

四方をコンクリートの天井と床と壁に囲まれた、地下の細長い通路を進みます。
視界の届く範囲の前方も、後方も、途切れることのない通勤者たちが、肩を触れ合わんばかりの距離を黙々と歩いています。

地下の通路には、特有の圧迫感がありました。
壁一枚向こうの土の重み。
窓が一切ないことからくる閉塞感。
窓がないため、外光に見放され、薄暗い人工照明に頼らなければならない心細さ。
人工照明のおよばないそこかしこに、地下の土の中へと人を引っ張っていくかのような不吉な印象の陰。

通路を進む通勤者たちに笑顔はありません。
また、寡黙です。
目的の乗換列車に一秒でも早くたどり着くため、歩を運ぶ足に意識を集中しているかのように、表情を押し殺し、黙して語りません。
その沈黙のため、靴が床を踏みつける、カッカッ、なり、ザッザッ、なりの無数の足音が四方をコンクリートで固められた通路にやけに反響していました。

無表情で、一言もしゃべらない、列になって前に進むだけの通勤者たち。
わたしもその例に漏れず、表情もなく、感情も押し殺し、ただ歩を前に進めるだけの通学者でした。
まるで、冥府の細長いトンネルを歩く死者たちの行進のように、うつろな行列が地下通路を延々とつらなり、ただただ寡黙に歩んでいくのでした。



そのとき、わたしは、心の中で中学生のころの自分に語りかけていたかもしれません。
『お前が興味をもっていた「大手町ウォーズ」を俺はいま、経験しているぞ』
と。
ただし、そのような記憶はまったくないので、おそらく、なにも考えずに黙々と歩行者の一人として人の渦の奔流に身をまかせ、地下通路を流れのままに流されていたのでしょう。
そのとき、我知らず、わたしの近くを神谷明さんが歩いてでもいたらちょっとしたドラマになるのでしょうが、現実はそううまくはいかないでしょうね。


Comments

東京のラッシュ時混雑は by 畑かぶら

漫画のように本当にぎゅうぎゅうと押し込まれるというエピソードを時々よそでもお聞きします(汗)。まさにウォーズ@@;。地下通路の描写…まるで小説のようですね!

Comment#61
  • 2019-07-17(Wed) 19:47:37
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ありがとうございます!かぶらさん by 大検高校

本当にぎゅうぎゅう、押し込まれます。
ひどいときは、ちょっと痛くなるくらいの詰め込まれ方もされます。
人が重なった圧力は、なかなかに馬鹿にできません。
それに、近くに女の人がいるときは気を使いました。
女の人に正面を向けていると、押し込まれたときに気まずいことに。
痴漢に間違われたら、たいへんです。
女の人には背中を向けるのが鉄則でした。
四方を女性に囲まれた日には、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車は地獄でしょうね、さいわいそのようなシチュエーションはありませんでしたが。

地下通路の描写にお褒めのお言葉、ありがとうございます。

これから暑い夏です、御多忙なかぶらさん、お身体には気をつけて。
電車での眠りが安らかであらんことを。
(←なに、かっこつけている、オレ)

とま子ちゃんも、夏休み、もう間近ですね。
とま子ちゃんに、良き夏休みを。

かぶらさん、さようなら。
とま子ちゃんによろしく!

Comment#62
  • 2019-07-18(Thu) 02:58:49
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