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荒俣宏……人類の叡智に欲情する現代の魔術師『異都発掘【新東京物語】』



夢にまで見た(べつに見たくもなかったが)荒俣宏

真夏の暑さに意識を半分失いかけていたとき、ぼうっとしたわたしの頭に浮かんだのは荒俣宏(あらまたひろし)でした。

こちらに背を向けた巨漢の荒俣宏に対し、わたしは、
「クマと素手で戦えるか?……どうなんだ、素手で戦えるならマッチメイクしてやるぞ……クマと素手でだ。どうだ? クマと素手で戦えるなら、俺がマッチメイクしてやる!」
としきりに、荒俣宏に対して叫んでいるのです。
荒俣宏は気乗りしない顔をして、わたしに背を向け、ただ黙っているだけでした。

これは、なに?
潜在的願望?
『あしたのジョー』の丹下段平(たんげ だんぺい)よろしく、クマとの素手での闘いをけしかけるのが?
しかも、なぜ、荒俣宏?
嫌いではないですが、著書をたくさん読んでいるわけでもありません。

寝てはいませんが、これは半覚醒状態の真夏の白日夢?
汗が肌に重くまといつく真夏の白日夢なら、どうせなら美女に出てきてもらいたいのですが、どうして荒俣先生が……。

しかし、なにかの縁ということで、荒俣宏のことをちょっと。




テレビでは別の顔(by真夜中は別の顔)

テレビに出演しているときの荒俣宏は、だいぶ、自分に制限をかけているように思います。

テレビだと、だいたい、同行しているタレントなり、芸能人なりの質問や問いかけを受けてコメントするというスタイルです。
コメントはさほど長くなく、簡潔にして要点を得ています。
ですから、聞きやすいし、理解しやすい。
そのため、知識がふんだんにありながら、社会性あり、協調性あり、分別のある大人という印象をお持ちの方もけっこういらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、荒俣の著書を読むと、そんなことはないことに気づくかもしれません。




荒俣、人類の叡智に陶酔

テレビでの荒俣の発言はわかりやすく、理解も容易です。
なにしろ、当たり障りのないことを言っているのでそれも当然かと。

しかし、著書になるとそうはいきません。
シャイで内弁慶かと思われる荒俣は、自分の世界……著書になるとおのれの趣味性を全開にします。
高度で難解なことを「理解していますね」という前提のもとに論を進めていくため、いともあっさりと置いて行かれてしまうのです。
はまるとおもしろすぎなのですが、はまらないとなにがおもしろいのかわからなくなります。
そうなると、こちらはついていけない。

たとえば、日本におけるコロニアル建築(植民地建築)。
マリアナ、カロリン、マーシャル群島など南太平洋を植民地にした戦前の日本国内では、南太平洋をイメージした、日よけ付きのベランダで周囲を取り巻き、シュロやヤシを植えた洋館が流行しました(参考文献:『異都発掘』【新東京物語】荒俣宏)。
この南方趣味が、いかに東京市民の心を魅了したかを力説し、またその痕跡を訪れては恍惚(こうこつ)の境地にひたります。
しかし、コロニアル建築の知識に関してとぼしく、さしたる思い入れもないわたしは戸惑います。
だが、荒俣は人類の叡智(えいち)に欲情するかのごとく、とどまることなく南方趣味への熱き想いを書き綴っていくのです。




隠れた神
隠された大黒様

しかし、はまるとしびれるような快感が生まれます。
知識の快楽に溺れている荒俣と共鳴するのです。
マニアックであるからこそ、合致したときには共感も大きい。
『エヴァンゲリオン』のシンクロみたいなものです。

たとえば、ほぼ都電からしか見ることができない大黒像。
東京新橋にある道路沿いの古い商店ビル上方に鎮座する大黒様は、角度的に背の高い都電(現在は廃止)からしか見えません。
例外的に、バスなどがセンターライン近くを走っているときに偶然にやっと目につくことがあります。
それ以外は、そこに存在している大黒様は、多くの人たちにとって「ないもの」に等しい存在になります。
それも都電が廃止されることにより、ますます「ないもの」に等しい存在に。
荒俣は言います、
「あの大黒は「隠れた都市の神」にならざるを得なかったのだった」
と。
(参考・抜粋文献『異都発掘【新東京物語】』荒俣宏)

「隠された神」というものに、妙な神秘性と畏怖を感じるわたしは、ここでやられてしまうわけです。
「隠れた神」というのは日本の神話では重要な概念です。
端的に言って、神様の不幸……死を匂わせるときに良く使われる表現です。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)の「天の岩戸(あまのいわと)」、大国主命(おおくにぬしのみこと)の「国譲り」など。
神話や宗教にも超天才的な知識を持っている荒俣は、それらのことを踏まえて「隠れた都市の神」のことを語っているのだろうと思われます。
著書にそのことは書かれていませんが、なにやらあやしい「隠れた都市の神」に荒俣は惹かれ、このいわくありげな新橋の大黒様のことを著述したのだと思います。




偉大なる暗黒の神・マハーカーラ

それと、荒俣宏の著書から離れて大黒様についてもう一つ。
商店ビルの上方にあるので、この大黒様は商売繁盛の神として祀られているのでしょう。
しかし、大黒様は様々な顔を持っています。
七福神の一柱として福福しいお顔をしておられる大黒様。
ですが、もともとはヒンドゥー教の神様です。
マハーカーラという神様です。
マハーとは「大」や「偉大」、カーラとは「時」や「黒(暗黒)」のこと。
偉大なる暗黒の神様がマハーカーラ。
破壊神シヴァの化身した姿です。
シヴァ神の夜の姿。
そして、世界を最後に破壊するときにシヴァ神が化身する恐ろしい黒い姿。
そう考えると、その大黒様がほとんどの人に気づかれることなくビルの上方に安置されているというのはなんとなく怖いことです。




叡智には荒俣を
白昼夢には美女を

かように荒俣は、著書において、おのれの欲望のおもむくままマニアックな著述にまい進します。
ついていくのは大変です。
しかし、はまると快楽は大きい。

だいたいにおいて、さほど興味のなかったコロニアル建築についてもいまは影響を受けています。
とある廃墟同然の洋館を目にしては、
『この洋館は、なにやら南方的な……これは荒俣宏が書いていた……』
などと、ぶつくさ心の中でつぶやいている自分がいるのです。
この強い影響力は、膨大な知識と知恵に裏打ちされた荒俣への信頼感がもたらすものでしょう。
その荒俣の叡智は、現代の魔術師に例えられましょうか。

ただし、願わくは、真夏の白昼夢には荒俣でなく、美女が脳裏にあらわれ出んことを。

Comments

荒俣氏かあ by 畑かぶら

確かに、テレビよりも著書の方が断然面白いなと思っていくつか流し読みした覚えがあります^^マニアックですよね!なんだったかなあ、妖怪系のお話だったかなあ、すぐ内容忘れちゃうので覚えていないのですが(汗)、ちょっとスピリチュアル的なことにも突っ込んだ、マニアックなお話がとても面白かった記憶があります♪
ただ、白昼夢にはロマンチックなお相手が出てきてほしいですね、うん(笑)

Comment#92
  • 2019-08-08(Thu) 20:36:40
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ありがとうございます!かぶらさん by 大検高校

しょぼしょぼした瞳と、濡れた肉厚の唇はキュートなんですけどね荒俣先生。
しかし、ロマンスの相手となると……(自重)。

いっそのこと白昼夢に、名女優のとま子ちゃんに出演してもらいたいですね。
クマをボクシングで倒して世界チャンピオンになり、リング上で一心不乱に「アラマータ!アラマータ!」と叫んでもらいたい(『ロッ◯ー』パクリ)。
そして、リングに上がってきた荒俣宏役のGACKTと抱き合うのです。
それなら、真夏の白昼夢もすっきり爽やか。
それとも、誰かほかに荒俣宏役をやってもらいたい俳優さんが、とま子ちゃんにはいらっしゃいますか?
たとえば、加藤諒くんとか?
(なんでここで、よりによって加藤諒くんを持ち出すか?オレ)

荒俣先生のマニアックさは、はまればとてもおもしろいんですよね。
そうでないときは、まったく内容覚えられないんですよ、難解すぎて。

かぶらさん、さようなら。
とま子ちゃんによろしく!

Comment#93
  • 2019-08-09(Fri) 12:24:49
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