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アプサラスはギニアスとアイナを捨てた「母様」の子宮なのか?(『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』)


アプサラス……VSジャブロー戦略兵器

アプサラスは、地球連邦軍本部ジャブロー奇襲のためのMAです。
ミノフスキー・クラフトを用い、弾道軌道でいったん連邦の防空圏外である成層圏まで上昇、つづいてジャブロー上空へ急降下、そこから高出力の大型メガ粒子砲で地下にあるジャブロー上部の厚い岩盤を貫き、地球連邦軍本部を壊滅させようというのです。

ミノフスキー・クラフトは、Iフィールド同士の反発力によって浮揚させる技術。
ミノフスキー・クラフトを搭載すると、航空機や可変MS/MAのように揚力を利用する必要がないため機体形状の自由度が高く、空中で静止できるため機体運用に多様性をもたせることができるなどといった大きな利点があります。
アプサラスのミノフスキー・クラフトは、先行して搭載されたMAX-03 アッザムのものを凌駕し、運動性が高く、飛行時間はより長く、高度1万m程度の上昇が可能でした。
大気圏突入時の降下速度は、連邦の警戒網をかいくぐり奇襲するにじゅうぶんなマッハ11以上であったともいわれています。

大型メガ粒子砲は、おそらく一年戦争時代のMS/MAのなかでも最強クラス。
優劣は判然としませんが、MA-08 ビグ・ザムの大型メガ粒子砲級のすさまじい破壊力。
じっさい、最終決戦で、アプサラスIIIの大型メガ粒子砲は山の中腹をえぐり貫通しています(第11話『震える山(後編)』)。

アプサラスIIの残骸を解析した連邦のシミュレーションによれば、急速降下でジャブローの第3次防衛ラインを単独突破、9秒後に直接攻撃が可能という予測が弾き出されました。
そして、至近から大型メガ粒子砲によりジャブローを消滅させるのがアプサラスの戦略目的でした。




アプサラスたち

アプサラスはアプサラスI、アプサラスII、アプアラスIIIと一つ一つステップアップを重ねて完成しました。

☆アプサラスI
重力下におけるミノフスキー・クラフトの安定的な運用のための飛行テスト機。
そのため、大型メガ粒子砲の砲口は設けられていますが、実射することはできません。
砲口は飛行実験を円滑に進めるためカバーで覆われています。
そのため非武装。
予想していなかった敵(08小隊)との遭遇の際には、ミノフスキー・クラフトの出力を急上昇させ、その衝撃波で08小隊のRX-79(G) 陸戦型ガンダムを吹き飛ばし翻弄しました。
これは「ミノフスキー・クラフト自体を攻撃兵器として利用した、非常に珍しい例」(抜粋:『THE OFFICIAL GUNDAM FACT FILE』ディアゴスティーニ)とのことです。
プロフィールが「武器はミノフスキー・クラフト」という希少な(唯一?)MS/MAということになりましょうか。

☆アプサラスII
高出力の大型メガ粒子砲を実装。
大型メガ粒子砲の発射試験に従事しました。
とくに大型メガ粒子砲とミノフスキー・クラフトのマッチングテストに重きを置きました。
待ち伏せされたアプサラスIIは、単独で08小隊の3機のRX-79(G) 陸戦型ガンダムと死闘を展開。
初めて発射されたアプサラスの大型メガ粒子砲の驚異的な威力に、08小隊の面々は戦慄しました。
ただし、射撃時のバランスに課題が残りました。

☆アプサラスIII
アプサラスの完成型。
アプサラスI、IIのデータをもとに欠点を克服、性能をさらに強化し、I、IIとは比べものにならない巨大で強力なMAになりました。
大型メガ粒子砲の拡散発射により、一瞬のうちに、確認できるだけでもRX-79(G) 陸戦型ガンダム1機の頭部を破壊、陸戦ガンダム1機撃破、RGM-79(G) 陸戦型ジム4機を撃破し、推定で20機以上のMSが犠牲になったのではないかとのこと。
最大出力の大型メガ粒子砲のビームは山肌を焼き貫通、その後方にいたビッグトレーを破壊しました。
最期は、シローとアイナの駆るRX-79(G)EZ-8 ガンダムEz8の捨て身の攻撃により、ギニアスもろともアプサラスIIIのコクピットはEz8の右腕に叩き潰され、ガンダムEz8ともつれ合うようにして火口へと消えていきました。

ちなみに、アプサラスの頭部はI、II、IIIと一貫してMS-06 ザクIIの頭部を流用していました。
大型メガ粒子砲の砲口の上部にザクIIの頭部が配されています。
ザクII頭部の左右両側の装甲にはスパイクめいた突起物があり、これがわたしにはザクIIのスパイク・アーマーに見えました。
ですから、手足のない巨大なザクIIに見えなくもなく……。
ギニアスには、ザクIIへの愛着やこだわりでもあったのでしょうかね?




アプサラス……インド神話の水の女神 その美貌の誘惑はときとして人を狂気に誘う

アプサラスの名は、インド神話の女神にちなんでいます。
アプサラスはインド神話の水の妖精、天女たちのこと。
「天上の踊り子」とも称される歌舞音曲の名手。
インドでは、古くから美女の典型とされています。

ただ、その美しさに違い(それとも、違わずと言うべきでしょうか)、けっこう恐ろしい一面を持つ天女たちでもあります。
たとえば……。
北欧神話のワルキューレさながらに、勇者を慈しみ、戦争で死んだ戦士たちをインドラ神の楽園に導く役目をになっています。
また、インドラ神の命令を受けて、その妖艶な美貌によって修行中の人間や聖者や英雄を誘惑し、堕落させ、破戒させる存在でもあるのです。
その誘惑により、人々に精神異常や狂気を起こさせるとも。

そのため、『機動戦士ガンダム 公式百科事典』(サンライズ 2001)にはこんな記述があります。
「アプサラスはその美貌を以って、英雄や苦行中の聖者を魅了するともいう。このMAのパイロット、アイナ・サハリンに連邦軍の士官、シロー・アマダ少尉が恋愛感情を抱き、彼女を救った結果、少尉が軍法会議にかけられたという挿話は、奇妙な符号である。」

たしかに、シローはアイナの美貌に(それだけではなく内面にもですが)魅惑され、連邦軍人としてははなはだまずいことになりました。
ジオン公国への戦意が鈍くなったのはたしかでしょう。
しかし、アイナへの想いは、故郷であるサイド2の8バンチ「アイランド・イフィッシュ」への毒ガス攻撃により家族や友人を失ったシローの、ジオン公国への激しい憎悪に凝り固まった心を救ったとも言えるでしょう。
(シローがジオンへの憎しみをあまりにもあっさり捨てアイナに恋愛感情を抱いたことに対する批判もありますが。
たとえば、6話から最終話までを担当した故飯田馬之助監督は、そのためシローのことを大嫌いになったことがあるそうです)




アプサラスはギニアスとアイナの母の子宮?

しかし、真にアプサラスに誘惑され、魅せられ、堕落し、狂気に追いこまれたのはギニアスでしょう。
アプサラスに魅入られたギニアス・サハリン。

アプサラス開発計画中止を本国のギレンに進言しようとした旧友ユーリ・ケラーネをその部下もろともに爆殺したり、アプサラスIIIを我がものとして独占するために苦楽をともにしたはずの開発スタッフを完成パーティーの席上で毒殺したりと、ギニアスのアプサラスへの執着は狂気以外のなにものでもありませんでした。

なぜ、ここまでアプサラスに執心したのでしょうか?
……母親が原因ではないでしょうか。

ギニアスとアイナの母親は、男を作り、二人を捨てて家を出て行ってしまいました【ただし、異説もあります】。
母に捨てられたギニアスの傷心は、いかばかりであったでしょう。
この過去のトラウマを癒やすためにアプサラスに夢中になっているように、わたしには思えてしかたありません。

「馬鹿な!愛など粘膜が創りだす幻想に過ぎん!母様も、そうやって我らを捨てたのだ!」
これは最終話におけるギニアスの言葉です。
シローを愛する妹アイナへの叫びでした。

「粘膜が創りだす幻想」というセリフが生々しく、非常に印象に残るセリフでしたが、その感情むき出しのきわどい表現がギニアスの傷ついた心を端的にあらわしているようにわたしには思えます。

ところで、アプサラスIIIは子宮のかたちをしているという説はけっこう有名です。
もし、それが本当で、ギニアスが子宮に模してアプサラスIIIをデザインしたのなら、あるいは無意識のうちに子宮に模してしまったのなら、ギニアスは母親を求めていたのではないでしょうか?

心理学用語に「同一化(同一視)」なるものがあります。
他者が持っている優れた性質を自分自身の人格のうちに取り入れ、自分自身の存在を他者へ重ね合わせることです。
ギニアスは、母の子宮のなかにいる「捨てられていない」胎児のギニアスになりたかったのではないでしょうか。
アプサラス=母の子宮とみなし、そのコクピットにいる自分を、まだ母に捨てられていない胎児のころの自分と同一化し至福に浸っていたのかもしれません。

わたしが最終話を観ていつも奇異な想いにとらわれるのは、アイナとシローのガンダムEz8の右腕にアプサラスのコクピットごと潰されるときのギニアスの表情です。
狂気に歪んではいましたが、どう見ても笑顔なのです。
アプサラスのなかで死ねることを喜ぶかのような笑み。
それは、胎内にいたころの「母様に捨てられていない」自分として生涯を終えることへの至上の喜びゆえだったのかもしれません。

「我が子アプサラス」
ギニアスの最終話のセリフです。
ギニアスにとってアプサラスは「我が子」でした。
捨てることなどできるわけがない我が子=アプサラス。
ゆえにアプサラスを処分しようとするユーリを殺害し、我が子を独占するために開発スタッフを殺害したのかもしれません。
テストパイロットとして自分とともにアプサラスを誕生させたにもかかわらず、自分たちを捨てた母親のように我が子(=アプサラス)を捨て、男(=シロー)のもとに去っていった妹アイナをギニアスが殺害しようとしたのも、母に捨てられた過去のトラウマのせいなのではないでしょうか。
(放たれた銃弾は胸に忍ばせていた懐中時計によってはばまれました)

それに、我が子(=アプサラス)を捨てることのない母をギニアスみずからが演じることにより、母に捨てられた過去を必死に塗り替えようとしていたのかもしれませんね。
決して母から見捨てられることのない子=アプサラス=ギニアス自身という過去の記憶の改変を夢見ていたのかもしれません。
傷ついたギニアスは、アプサラスの子宮のなかで胎児となり、母の愛による再生を願っていたのかもしれません。



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