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『機動戦士ガンダム』ゲームブック……忘れられた超マイナーな「ガンダム」たち(『機動戦士ガンダム 灼熱の追撃』)


『ガンダム』のゲームブック

80年代後半に、宇宙世紀ガンダムを題材にしたいくつかのゲームブックが出版されました。

『機動戦士ガンダム 最期の赤い彗星』(86)
『機動戦士ガンダム 灼熱の追撃』(86)
『機動戦士Zガンダム ジェリド出撃命令』(87)
などです。
(3冊とも、OVA『ポケットの中の戦争』(89)に連動したとおもわれる改訂版が89年に発売されています)




あまりにも、あまりにもマイナーなゲームブック、それゆえ愛着もひとしおか?

ゲームブックは、アニメやそれに次ぐ漫画・小説・テレビゲームなどと違い、『ガンダム』世界では日陰ものゆえ、手に取って読破した人たちは少数だと思いますが、それゆえにこそ「ダメな子ほどかわいい」という心境から思い入れのある方たちもけっこういらっしゃるのではないでしょうか。
「自分たちだけが知っている」というマイナーな雑誌やラジオ番組、漫画家、アーティスト、アイドルなどを応援する気分に似た心理を抱いている方もいらっしゃることでしょう。

わたしは残念ながら、『ガンダム』のゲームブックを一冊も読んだことがありません。
いまや、マイナーゆえの希少価値から古本も高価で、入手するにもなかなかに勇気のいる状況であります。




『閃光のハサウェイ』よりマイナーな、世界の片隅にいた『ガンダム』ゲームブックたち

わたしは発売当時、富野由悠季『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(上)』(89年)を購入して読んだことがあり、アニメにまったく関係ない小説『閃光のハサウェイ』を読んでいることに、少数者ゆえのマニアックな喜びを抱いていました。
しかし、作者が大御所の富野由悠季であり、いまほどアニメ以外の『ガンダム』がさほど注目されていなかった時代とはいえ、それなりにメジャーな小説です。
無名の作者による、ゲームブックなどという傍流中の傍流とは比較にならないかもしれません。

ゲームブックをかつて読んでいた方たちの「おれだけが、この作品の良さをわかっているんだ」という、選ばれた少数者の愉悦(ゆえつ)はいかばかりであったことでしょう。
じっさい、わたしが『ガンダム』では『ZZ』『逆襲のシャア』や小説『機動戦士ガンダム』(富野喜幸、ソノラマ文庫)を観たり、読んだりしていた時代に、「世界の片隅」感いっぱいの『ガンダム』ゲームブックを愛読していた方たちには、ある種、自分がやれなかったことをしていたことへの羨望をすら覚えます。
名門学校への憧れのような、『ガンダム』偏差値の高さへのうらやましさを。
(むろん、ゲームブックを読んでいるだけでそれが決まるわけではありませんが、あまりにもマイナーすぎるものに時をついやしていたのですから、そのレアさからかなりの偏差値をかせいだと言えるのではないでしょうか)

とくに、シャア、ジェリドが主役の『最期の赤い彗星』『ジェリド出撃命令』と違い、無名の16歳の少年ジョン・クエストなるジオン公国軍の二等整備兵が主人公という、「よく企画を通ったな」ものの『灼熱の追撃』というマイナー中のマイナー作品の読者には。




『灼熱の追撃』その時代

『灼熱の追撃』のあらすじをご紹介します。
(※ネタバレあり)

0079年12月12日~12月15日の物語です。
『ポケットの中の戦争』では、12月12日にRX-78NT1アレックスがサイド6のリボー・コロニーに搬入、13日にはリボーにおいてバーニィとアルが出会い、14日には月の裏側の月面都市グラナダでバーニィがサイクロプス隊に合流、15日には偽装貨物船アグワベルデに搭乗したバーニィがリボー近傍宙域での陽動作戦にまぎれてリボーに入港しています。
大局的には、14日に連邦軍が星一号作戦を発動。
ちなみに、12月の24日にソロモンの戦い、25日にクリスマス作戦、31日にア・バオア・クーの戦いが宇宙ではおこなわれています。




ジョン・クエスト……少年は戦いの旅に出る

主人公は、ジオン公国軍の二等整備兵(上等兵に相当)でMSの実戦経験のないジョン・クエスト。
16歳。
学徒動員令によって召集された新兵です。

クエストが赴任した第18補給基地(アフリカ/タンザニア地区/キリマンジャロ近傍)は、突然、ジオン公国軍の有名なエースであるクランベリー大佐率いる5機のMS部隊に襲撃されました。
味方であるはずのジオン公国軍人クランベリー率いるMS部隊「鉄のサソリ」に、基地は奇襲されたのです。
約30名いた基地の兵士たちのなかで襲撃から生き残ったのは整備兵のクエスト、従軍看護婦のルリア(18歳)、そして、重傷を負い生命の危うい基地司令のたった3名のみ。

基地司令によると、第18補給基地には新兵器に関する最重要機密データが保管されていて、クランベリーはその機密を奪い、連邦と取引をしようとしているのだろうとのこと。
生存者のなかで唯一、MSを操縦可能なクエストに、基地司令はクランベリーたちの追跡、追討、最重要機密データの奪還を命令。
こうして、満足にMSを操縦したことのないジョン・クエスト二等整備兵は、MSに搭乗し、「鉄のサソリ」を追う旅に出る羽目になりました。




ジョン・クエスト……少年兵の砂の大地の戦い

結果的には、キリマンジャロ近傍タンザニア地区の第18補給基地からアフリカの砂漠地帯を縦断し、ゲド要塞(エチオピア高原)で「鉄のサソリ」との戦いに決着をつけ、最終的にはアラビア半島の南端にある宇宙港アデン基地(イエメン)まで、長大な冒険を経験することになります。

折あしく、2、3日後に展開される「ジオン軍掃討作戦」のため、アフリカの大地にはかなりの数の連邦軍先遣隊が入り込んでいました。
クランベリー率いるMS部隊「鉄のサソリ」のほか、アフリカ各地に展開する連邦軍もまたクエストの前に立ちはだかります。
連邦の狩り場と化したアフリカ。
ただ、本格的なジオン掃討のための軍隊投入にはわずかながらも猶予があるため、各地に分散した連邦軍先遣隊はそれぞれが比較的小規模であるというのが救いといえば救いでした。

ゲルルググキャノン、ドム、グフ、デザートザク、ジム、ジムキャノン、ジムライトアーマー、ジムスナイパーカスタム、ガンタンクII、ガンタンクIII、コアブースター、78式浮行戦車(連邦のホバー推進戦車。ビームライフル並の威力をもつビーム戦車砲を搭載して「MSキラー」の異名をもつ。MSと互角に戦えるコアブースターのような数少ない非MS兵器)などなどと死闘を繰り広げるクエスト。

戦いの中で、クエストは人間としても戦士としても急成長してゆきます。
最後には、ゲド要塞で、ゲルググキャノンを駆るクランベリーをも激闘の果てに打ち負かしました。




明かされた真実 砂漠地帯で遂行されたギレンの陰謀

そして、瀕死の重傷を負ったクランベリーから事の真相が告白されます。
クランベリーは、ギレンによってソーラレイシステムから連邦の目をそらすための囮作戦を言い渡されていたのです。
ジオンの最重要機密というのはデマで、ウソの最重要機密に連邦の目を引きつけ、そのあいだにソーラレイシステム完成の時間をかせぐというものでした。
第18補給基地の戦死者のみんなは、ギレンの立案した陽動作戦の犠牲になり亡くなったのです。
ジオンの同胞を、おのれの意に反してその手にかけなくてはならなかったクランベリーもまた戦争の犠牲者だったのです。




『灼熱の追撃』は少年の成長物語

12月12日~15日の短期間に、ジョン・クエストはたんなる二等整備士のMS実戦未経験者から、百戦錬磨のエースパイロット・クランベリー少佐をもMS戦で撃破する凄腕のエースパイロットへと成長しました。
『灼熱の追撃』は少年の成長物語。
そして、劇的に自分の名声・名誉を上げたいと願う人たちのヒーロー願望を満足させてくれる少年が主人公の物語なのです。




そして少年はヒーローに

戦い終えてアデン基地(イエメン)にたどり着いたクエストを目にしたアデン基地司令官マックガイア少将は、『その少年の顔は、信じられぬくらいりりしく、輝いて見え』たといいます。
また、『マックガイアは、長い人生の間で、これほど誇りに満ちあふれた少年をみたことがなかった』と。
頼りなかった少年は砂漠の戦いと冒険によって成長し、困難を克服してエースになり、ヒーローになったのです。




少年と少女は砂漠から宇宙へ

宇宙世紀0079年12月15日、「ジオン軍掃討作戦」がアフリカに吹き荒れようとしているなか、第18補給基地まで戻ったクエストはルリア、基地司令とともに、アデン基地から借り受けたシャトルで宇宙へ脱出します。
しかし、重力圏離脱の衝撃に耐えられず、重傷だった基地司令は亡くなりました……。
第18補給基地の生き残りはクエストとルリアの二人だけになりました。
二人のその後の行方は、誰も知らないといいます。



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