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速水奨「かっこいい暗さ、っていうのかな……」(自分で言うな!)(『アニメワールド・スターチャイルドステーション』)



速水奨

速水奨(はやみ しょう)といえば、アニメ声優界の大スター。

1980年(22歳)に声優デビューしてから現在まで、主としてアニメ系の作品の第一線で活躍しています。
吹替と違い、ベテラン起用の少ないアニメ系作品において、若いころはもちろん61歳のいま(2019)にいたるまで引きも切らずアニメ系作品のキャラクターの声を多数担当しているのは驚異的ですらあります。

アニメ声優の歴史に、特別な存在の一人として刻まれることが約束された生きた伝説と言っていいでしょう。

代表作の一例:
マクシミリアン・ジーナス『超時空要塞マクロス』、バーン・バニングス/黒騎士『聖戦士ダンバイン』、ポル・ポタリア『装甲騎兵ボトムズ』、桂木桂『超時空世紀オーガス』、ギャブレット・ギャブレー『重戦機エルガイム』、アイアンハイド『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』、バロン・リックス『赤い光弾ジリオン』、飛鳥武蔵『風魔の小次郎』、菅生修/ナイト・シューマッハ『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』、エクスカイザー『勇者エクスカイザー』、ダ・ガーン『伝説の勇者ダ・ガーン』、ギニアス・サハリン『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』、愛染惣右介『BLEACH』、明智光秀『戦国BASARA』などなど。




速水奨はもてる

甘いバリトンのたぐいまれなる美声で知られる速水奨は、なかなかの美男子としても知られています。

『聖戦士ダンバイン』(1983)のときは共演したうら若い女性声優さんたちから、もてもてだったとのこと。
『ダンバイン大事典』(ラポート発行、1984)の西城美希(ガラリア・ニャムヒー、ベル・アール、ラナ・パーキンスン)さんの文章を抜粋してみます。

西城さんの速水奨の第一印象(ダンバイン第一回収録日)は、
「うわぁ、ステキな人!」
だとのこと。
さらに、アフレコでバーン・バニングスを演じている速水奨の横顔には、
「速水さんの横顔はとても凛凛しくって思わずみとれてしまうほどでした」
と、わたしなどは一生経験できないであろう、若き乙女に熱き視線を注がれています。
また、『ダンバイン』のレギュラー女性若手声優の色川京子(リムル・ルフト)さん、川村万梨阿(チャム・ファウ)さん、高田由美(キーン・キッス)さんとはひそかに「バーン・バニングスFC」なるものを結成していたといいます。
これは『ダンバイン』の美形ライバルであるバーンのファンクラブなのですが、みなさん、速水奨に憧れていたそうですので速水奨ファンクラブでもあったのでしょう。
「とっても優しくてステキな速水さん」
「私たちの☆あこがれの的☆だったのです」
と、西城美希さんの速水奨への想いは止まらないのであります。

しかし……。




速水奨はヘン

ただし、速水奨は美声で美男子として有名のみならず、「天然のヘンな人」としても名を馳せています。
その資質は、デビュー間もない『ダンバイン』のころにはすでに存在していたようです。

西城美希さんが速水奨と出会って3週間後。
高田さん、川村さん、色川さんたちとともに速水奨と初めて飲みに行った時のことでした。
『ダンバイン』のキャラクターについて語りあっているとき、西城さん演ずるガラリアのことが話題にのぼりました。
ガラリアは、騎士の父親が敵前逃亡したためいじめられた過去があり、その恥をすすごうと功名心に焦る女騎士でした。
余裕がないのです。
ちなみに美女です。
そんなガラリアを評してショット・ウェポン役の田中正彦さんが、
「ガラリアは、女性としてはあまりかわいくないね」
とおっしゃいました。
それにたいし、すかさず速水奨は、
「いやしかし、そういう女はくずしがいがある。フッハッハッハッハッ!!」
と「バーン特有の腹式法笑いで、さりげなくすごいことをいってのけた」のだそうです。
男同士の酒の席ならともかく、女性同席でこれはまずい。
女性たちはみな20代前半、10代後半です(西城さんは速水奨の3つ年下ということで22歳あたり)。
そのうら若い美女たちを前にして、「くずしがいがある」はデリカシーに欠けているでしょう。
西城さん、色川さんは「え?」と驚き、川村さんは「こ、これが、本当のバーンなのね」と嘆いていたそう。
「これで一気に私たちのつくりあげていた速水像がガラガラとくずれてゆくのを感じたのでした」とのこと。
キーン役の高田さんは速水奨と同じプロダクション所属ということで、「こんな人と同じ事務所だと気苦労も多かろ」とほかの3人は常に同情するまでに。
速水奨への、『ダンバイン』若手女性声優陣の思慕は雲散して果てたのでした。

文章の末尾で、
「ホントはバーンが好きだったガラリアこと西城美希でした♡」
とつづっています。

(その後まもなく、西城さんは役者の世界から姿を消しました。
ガラリアやベルの再録も、ほかの声優さんが代役をつとめています。
真実であるか否かは不明ですが、結婚を機に引退したのではないかとか、ビデオで販売する『ダンバイン』総集編(1988)の再録のさいに探偵をやとって探すも行方がつかめなかったとか……。
速水奨のことを好きだった西城美希さんは、あまりにも短い声優人生を駆け抜けていったのです)




速水奨「かっこいい暗さ、っていうのかな」

1982年、『超時空要塞マクロス』のマクシミリアン・ジーナスが当たり役になり、1983年、富野作品『聖戦士ダンバイン』の主人公の最大のライバルであるバーン・バニングス、人気的には低迷したものの『超時空世紀オーガス』の主人公・桂木桂を演じ、若手のアニメ声優として確固たる地位を築きつつあった速水奨は、1984年、富野作品『重戦機エルガイム』で主人公ダバ・マイロードのライバルであるギャブレット・ギャブレーを演じました。

そのとき、栃木放送をキー局とするラジオ番組『アニメワールド・スターチャイルドステーション』(月曜日放送、30分番組、時間帯は夜の10時30分から?)にゲスト出演しました。

ここでも、速水奨はやってくれます。

『機動戦士ガンダム』(TV版1979~80、劇場版1981~82)の大ヒットがあり、1984年当時も富野由悠季作品はアニメ界の中心の一つでした。
その富野作品で、2年連続で主人公のライバルを演じる速水奨は、まちがいなく当時のアニメ声優の若きスターでした。

中学1年だったわたしは、電気を消した暗闇のなかに寝転がり、電源ランプなどわずかに漏れる光にうっすらと照らされながらラジオに耳を傾けます。

『アニメワールド・スターチャイルドステーション』のパーソナリティーの方は、明るく、さっぱりした気性の、はっきり物を言うタイプの女性で、
「聞くところによると速水さんって、お暗いとか?」
と番組半ばごろ、直球の質問を投げかけました。
それに対する速水奨は、腹から響く「腹式法」の力強く、それでいて甘い声で、
「かっこいい暗さ、っていうのかな……」
と返しました。
これにはパーソナリティーの方も、「自分で言うな!」という感じで大爆笑。

たしかに速水奨はかっこいい。
暗くてもさまになるかっこ良さです。
たぐいまれな美声にして、なかなかの美男子です。
しかし、「自分で言うな!」なのです。
暗いけどかっこいい、は他人が言うこと。
ですが、それを多くの人が聴いているラジオで言ってしまうのが速水奨なのです。

わたしは、若いころ、このインパクトのある「かっこいい暗さ」の声マネを何度したことか。
そして、「かっこいい暗さ」にどれだけ憧れたことか。
それは憧れだけに終わってしまいましたが、その影響力のすさまじさも速水奨が大スターであるあかしなのでしょう。
きわめて声良し、なかなか顔良し、かつ天然のぼけっぷりと、速水奨はスターになるべくしてなった御仁と申せましょう。