FC2ブログ

Contents

久保田雅人……ワクワクさん『つくってあそぼ』で有名だが、自分的には降板させられた?「矢作省吾」『メガゾーン23』


ワクワクさん『つくってあそぼ』で人気者の有名人になるも、直前までやっていた声優業では苦汁をなめたことも

久保田雅人(くぼた まさと、1961~)という俳優、タレントさんがいらっしゃいます。

この方は、NHK教育テレビ(2011年6月1日からNHK Eテレ)の子供向け工作番組『つくってあそぼ』(1990.4.4-2013.3.30)の「ワクワクさん」を演じた方として、そのお名前をご存じの方もいらっしゃるでしょう。
1990年から2013年まで23年間続いた長寿番組の主役ですから、役に恵まれたと申せましょう。
ワクワクさんの名が知られるようになると次第に仕事も増え、全国を回るようになり、年によっては年間300本ほどの講演を行っていたというのですから、仕事が順風満帆であったろうことは容易に察せられます。
また、「ノッポさん」で有名な『できるかな』(1970.4.8-1990.3.9)を引き継ぐ後番組の主役でもあり、「ワクワクさん」に選ばれたのはかなりの幸運を引き当てたと申してよろしいのではないでしょうか。

しかし、わたしは久保田雅人さんが、そのような有名人になっていたとは去年(2019年)までつゆとも知りませんでした。
「ワクワクさん」も『つくってあそぼ』のことも、まったく知りませんでした。

わたしのなかで久保田雅人さんというと、1986年以来2019年にいたる33年間のあいだ、「かわいそうな人だなあ」という印象が強い方でした。




久保田雅人、超ヒット作『メガゾーン23』の主役・矢作省吾役を降板?!

大学生のときから俳優をしていた久保田さんは、間もなく、声優デビューをします。
1985年。
作品は『メガゾーン23』。
その主役の「矢作省吾」です。

『メガゾーン23』は累計26,518本をセールス、OVAとして当時、過去最高の売上を記録しました。
当時のビデオ雑誌にも、それまでのOVA最高のセールスを記録した『メガゾーン23』の「快挙」が報じられていました。

その主役なのですから、久保田さんの声優としての地位は安泰……だったのでしょうか?
さにあらずです。
その翌年86年に、久保田さんに(もしかしたら)屈辱的なできごとが起きます。

続編である『メガゾーン23 Part II』(1986)の矢作省吾役は矢尾一樹(やお かずき)に。
久保田さんは、役をおろされました。
いや、正確にいえば、おろされたのかどうか不明です。
わたしの調べた範囲では、この交代の詳細をつかめませんでした。

ですから、久保田さん本人が出演を拒否したなり、事務所が変わって出演できなくなったなど契約上の都合なりがあったのかもしれません。
それは、わかりませんが、86年当時のアニメファンのほとんどは「久保田雅人は矢尾一樹に矢作省吾役を奪われた」とおもったことでしょう。




二人の矢作省吾『メガゾーン23』……久保田雅人と矢尾一樹

矢尾一樹はすでに大人気声優でした。
「やってやるぜ!!」の野性的な決め言葉が話題になった『超獣機神ダンクーガ』(1985)の主役・藤原忍(第8回アニメGPの男性キャラクター部門で「上杉達也(タッチ)」「シャア・アズナブル(機動戦士Zガンダム)」に次ぐ第3位を受賞)でブレークし、『機動戦士ガンダムZZ』(1986)の主役であるジュドー・アーシタ役に抜擢されるなど、矢尾は若き大スター。

かたや、久保田さんは声優活動をつづけるも、お世辞にも活躍中とは言いがたい……まあ、無名の存在だったわけです。
その状況で、久保田さんから矢尾一樹に矢作省吾役が移ったわけですから、「久保田雅人は降板させられた」と多くの人が思うのもしかたのないことでしょう。
その真の理由をいまでもわたしは知りませんが、いまも「あれは、おろされたんだろうなあ」と思っています。

【ちなみに、『オリジナルビデオアニメ(OVA)80'S テープがヘッドに絡む前に』(出版ワークス、2018)という書籍には、現物をもちあわせていないので詳細は不明なのですが、矢尾一樹がインタビューで「久保田雅人は、引っ越しを手伝ったこともあるくらい知人だった」と発言しているとのこと。
久保田さんにとっては自分の役が知人(どれだけ親しかったかは不明ですが)へ、矢尾からしてみると知人の役が自分へまわってきたことになります。
相手のことを大なり小なり知っているだけに、見ず知らずよりも、けっこうきつそうです……】




久保田雅人の矢作省吾は、正直、ひどすぎた……

それに、ワクワクさんとして仕事で成功したいまだから言えますが、声の魅力、声の演技ともにさほどではない……というのが正直な感想です。
声の演技にいたっては、デビュー作にしてもひどすぎるな、と。
「この人、しろうとなのかな?」と思っていました。
人間関係や仕事関係などの大人の事情によって主役を獲得したのかな、と。
売り出し中の俳優や歌手やアイドルにちょっとでも箔をつけさせるため主役をあてがったのではないか、などとすら思いました。




『メガゾーン23』で声優デビューした二人……声優で成功をおさめることができなかった久保田雅人(主役)と、のちの大声優・山寺宏一(脇役)

『メガゾーン23』で声優デビューした人がほかにもいます。
山寺宏一でした。
いまや日本声優界の歴史に残ること間違いなしの大声優ですが、デビュー作で演じたキャラクターは、矢作省吾の親友で、矢作が事件に巻き込まれるそもそもの原因をつくった役どころですが、セリフは二言三言だけ、登場して2分足らずで軍部の機密を漏洩(ろうえい)したかどで軍人に射殺されてしまう脇役でした。

そんな、中川信二(なかがわ しんじ)というチョイ役もいいところの役柄で声優デビューした山寺ですが、声の魅力、声の演技はこのころからかなりのもの。
かっこよすぎる声、安定した声の演技。

言ってはなんですが、おなじ声優デビューでも、脇役のほうが主役よりもよほど主役らしい声と演技の魅力に富んでいます。
これは、わたしだけの感想ではないようで、ネットでも「省吾と信二の会話を聴いて、どちらがうまいか一目瞭然」(もちろん、中川信二=山寺宏一のほうがうまいということです)という意見を見かけました。

かように、知名度なし、声の演技良からず、では『Part II』において降板させられたと信じて疑わないのも無理からぬことでしょう。

【ちなみに、『Part I』(85)、『Part II』(86)に対し、ちょっと間を置いて三年後に制作された『メガゾーン23 III』(89)は、『メガゾーン23』声優同窓会とも呼べるような配役がなされていて、山寺宏一、矢尾一樹とともに久保田さんも出演しています。
(ほかに前2作のヒロイン・高中唯役の川村万梨阿。
さらには偶然なのか故意なのか、『メガゾーン23』と関係の深い『超時空要塞マクロス』の主役・一条輝役の長谷有洋、ヒロインの一人・早瀬未沙役の土井美加)
しかし、矢作省吾役はもちろん矢尾一樹(『III』では主役でなく、出演時間も短いのですが)。
『PART I』では出演時間一分前後であった山寺宏一は、男性キャラクターでは主役のエイジ・タカナカとそのライバル(?)にあたるピーター・ヤコブ(※1)に次いで3番目に重要だと思われるシオンを演じています。
一方『Part I』の主役を演じた久保田さんは、クラックという、いまだに作中の誰だかわからない……ただ、たしかなことは主要人物でないことだけはたしかなキャラクターを演じていました。
85年から4年、あまりにも正直すぎる声優としての評価と申せましょうか】

【※1……ヤコブの声優は『聖戦士ダンバイン』(1983)のニー・ギブンなどを演じた安宅誠(あたか まこと)。
アニメ作品への出演はそう多くありませんが、自分的には日本声優界でも有数の美声の主だと思っています】




声優で大成しなかったからこその大成功? 久保田雅人、矢作省吾からワクワクさんへ

けっきょく、声優として、久保田さんは大成しませんでした。
しかし、『メガゾーン23』からは5年、『メガゾーン23 Part II 秘密く・だ・さ・い』からは4年、『メガゾーン23 III』からは1年足らずのちに、「ワクワクさん」という当たり役に恵まれました。

屈辱と辛酸をかなりなめたかもしれない声優業のあとに、陽がさしたのです。
不遇をかこっている方たちには(わたしもその一人ですが)、もしかしたらその役者人生からは希望がもらえるかもしれませんね。